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消費増税と首相 政治的な思惑がのぞく

 来年4月の消費増税を巡って安倍晋三首相が発言を変化させている。延期の条件は従来「リーマン・ショックのような事態」だったが、「世界経済の大幅な収縮」を加えた。

     最近の市場混乱を踏まえ、与野党からは「条件を緩めて増税を先送りし、衆参同日選に打って出る布石ではないか」との観測が出ている。

     増税の可否は本来、経済状況を客観的に分析したうえで判断するのが筋だ。首相は「現在のところ延期する考えはない」と語っている。政治的な思惑に左右されては困る。

     増税は税率を10%に上げるもので当初は2015年10月の予定だった。だが、14年4月に8%に上げた後、景気が低迷した。首相は「(アベノミクスの目標である)デフレ脱却を危うくする」と14年11月に増税延期を決め、衆院解散に踏み切った。

     首相は同時に「再延期はない」と明言した。景気次第で時の政権が延期を判断できる「景気条項」も消費増税法から削除した。その後も「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施する」と述べてきた。

     ところが、年明け以降に株価が急落するなど市場の混乱が深まり、これにつれて首相の発言も変わった。

     「世界経済の大幅な収縮が実際に起きているか、専門的見地も踏まえ(延期を)政治判断で決める」と新たな条件を持ち出した。首相のブレーンである本田悦朗内閣官房参与は最近、増税凍結を主張している。

     首相は、16年度予算案の衆院通過に合わせ、世界経済を議論する専門家会合の設置を表明した。5月の主要7カ国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向けた準備の一環と説明したが、次の政治日程をにらんだ思惑が働いたと考えるのが自然だろう。

     14年に増税延期を決めた際も有識者会合を開いて地ならしした。この経緯に重ねて「サミットに合わせて増税延期を表明し、衆院解散の名分にするのでは」との観測もある。

     日本は先進国で最悪の財政状況にある。消費税は少子高齢化時代の社会保障を支える貴重な財源だ。一方、リーマン・ショックや東日本大震災のような危機に直面した場合は、増税延期もやむをえないだろう。

     しかし、首相は「世界経済の大幅な収縮」を明確に定義していない。

     政権が景気と増税延期を裁量的に判断できる余地を広げたと言える。リーマン級の危機でなくても、政権の都合で延期できる布石を打ったとみられてもおかしくない。

     景気条項を削除したのは、そもそも政治的な思惑が入り込むのを防ぐ狙いだったはずだ。首相発言の変化は、これにそぐわない。

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