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大震災から5年 緊急事態条項 まずは必要性の検証を

 災害大国である日本の法体系に不備はないのか。あるとしたらどう手当てすべきか。東日本大震災の経験を踏まえた点検は不断に必要だ。

     その際の論点の一つに、緊急事態条項がある。緊急時の政府対応や国会議員任期の特例などを憲法に書き込んでおくべきか否か、である。

     憲法改正に執着する安倍晋三首相は、この条項の創設を改憲の突破口にしたいと考えているようだ。

     今年に入って「いよいよどの条項について改正すべきか新たな段階に入った」「緊急時の国家の役割を憲法に位置づけることは極めて大切な課題だ」などと述べている。2日には「私の在任中に成し遂げたい」と改憲の時期にまで踏み込んだ。

     首相は中身については何も語っていない。しかし、自民党が2012年にまとめた憲法改正草案の緊急事態条項を読む限り、とても容認できるようなものではない。

     まず、首相は「外部からの武力攻撃、社会秩序の混乱、大規模な自然災害」などに際して緊急事態を宣言できる。宣言が発せられると、内閣は「法律と同一の効力を有する政令」を制定できる。そして、国民は「何人も国その他公の機関の指示に従わなければならない」−−。

     自民党案が、非常時における行政権限の大幅拡大と私権の制限に力点を置いていることは明らかだ。

     これに対し、緊急時でも守られるべき国民の権利を書き込むことこそ条項の目的だという意見も根強くある。緊急事態条項が権力に乱用されてきた歴史が各国にあるためだ。

     すなわち、緊急事態条項の趣旨や目的のとらえ方が、立場によって大きく異なり、共通理解の成立に至っていないのが実情である。

     議論を整理するには、何よりも5年前の検証作業が欠かせない。

     大津波の襲来と原子炉の暴走が同時進行したことで、避難指示の決め方から救援物資の搬送、自衛隊の派遣、放射能に関する情報提供まで、政府の初動は混乱を極めた。

     そこに法律の不備があったのか。法運用の仕方で解決できたものは何か。法律を超えて憲法上の根拠を必要とするものがあるのか。

     事実に即したこれらの検証なしに、緊急事態条項さえあれば今後は支障がないと考えるのは幻想だ。逆に冷静な検証を積み上げて初めて条項創設の是非は、まっとうな政治課題になるだろう。決して改憲のための改憲であってはならない。

     かけがえのない古里を追われた福島の人びとは、憲法25条の保障する生存権を脅かされたままだ。改憲以前の過酷な現実が日本にはある。

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