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大震災から5年 原発事故 日本は何を学んだのか

 あの福島第1原発の過酷事故から私たちは何を学び取ったのか。新たな社会をどう築けばいいのか。

     この5年を振り返ると、もどかしさが募る。対策を取っても原発事故は起きうる。地震・火山大国である日本にとってそのリスクは他国の比ではない。困難はあっても、原発に頼らない社会を築いていきたい。次々と爆発する原発の恐怖に、多くの人が決心したはずだった。

     それから5年、古里に帰れず避難先で生活する人々は今なお10万人に上る。放射能汚染は土地を奪い、産業を崩壊させ、家族やコミュニティーの分断を招いた。

    政策決定は逆戻りした

     これほどの犠牲を目の当たりにしながら、政府は原発維持政策を打ち出し、電力会社はこの1年で原発4基を再稼働させた。「もう福島のような事故は起こらない」。そんな言葉さえ聞かれるようになった。日本はこのまま原発回帰の道を歩んでいいのか。過酷事故の原点に戻り、立ち止まって考えたい。

     事故直後、民主党政権は政策を転換し、「2030年代に原発ゼロ」を打ち出した。国民の意見を反映させる新方式を採用した結果だったが、自民党政権は方針を撤回、「依存度を下げる」としつつ原発維持の政策を決定した。30年時点での電源構成を決めるにあたって優先されたのは目先のコストだ。国民の意見をくみ上げる工夫もなく、政策決定の仕方は事故前に逆戻りした。

     毎日新聞は、原発のない社会をめざしつつ、経済的・社会的リスクに留意し、一定の条件の下では再稼働もやむをえないと考えてきた。ただし、それは国民の納得が前提だ。住民の安全確保も必要条件で、そのための規制は確かに変わった。独立した規制委員会が設けられ、規制基準は厳しくなった。安全対策も以前とは違い、過酷事故を起こした後の対応まで考慮されるようになった。

     ただ、これは世界の常識であり、事故前の日本の不備を世界標準に合わせたに過ぎない。住民を被ばくから守る「防災対策」が規制の対象外で、地域の防災計画や住民避難をチェックする責任を規制委が負わないといった課題は残されたままだ。米国では規制の対象であり、日本も見直しが必要だ。

     事故対応の司令塔機能や国民への情報公開が大混乱したことの反省も生かされているとは言い難い。今ごろになって、東京電力による「炉心溶融(メルトダウン)」の判断が早期に公表できたはずであることが明らかになったが、これは情報公開のあり方が検証されてこなかったことの表れでもあるだろう。

     九州電力が事故時の対策拠点となる免震重要棟を原発再稼働後に造らないと言い出したことも考え合わせると、事故後に再三言われた事業者の安全文化向上にも疑問符が付く。「規制基準さえ満たせばいい」という気分がはびこるようになれば、安全神話が復活する。規制委も事業者も、「重大事故は起きうる」と言い続け、事故対応のあり方を常に点検していかなくてはいけない。

    脱依存社会あきらめず

     先月末には事故当時の東電の幹部3人が検察審査会の議決に基づき強制起訴された。あれほどの大事故を起こしながら誰も刑事責任を問われていないことに納得のいかない人は多いはずで、その国民感情に沿ったものだろう。こうした「無責任体制」は、事故後も変わっていない。過酷事故が起きた時の責任を、誰が、どのように取るのか。はっきりさせておく仕組みが必要だ。

     事実上破綻している核燃料サイクルを政策転換できないことの問題も大きい。このままだと使用済み核燃料の再処理で生じるプルトニウムを消費するために原発を動かすことになり、「脱原発依存」に反する。政府は再処理延命策を講じようとしているが、むしろ、直接処分に道を開くことの方に力を注ぐべきだ。

     原発を即ゼロにしても逃れられないのが高レベル放射性廃棄物の最終処分だ。事故後、政府は処分場候補地の選定方法を変更し、今年中に「科学的有望地」を公表する方針だ。しかし、人々の合意をどう取り付けていくのか、本気の姿勢が感じられない。この問題を先送りにしたまま再稼働を進めることは、やはり、事故前への後戻りでしかない。

     こうしてみると「本質的なことは何も学ばなかった」と言いたくなるが、あきらめず一つずつ解決していくことが大事だ。世間の節電意識が薄れたとしても、失われたわけではない。昨夏の猛暑でも電力供給に問題が生じなかった背景には節電効果もあるはずだ。

     原発依存への回帰を防ぐもう一つの望みは電力会社の地域独占を排するシステム改革かもしれない。透明性のある競争を取り入れつつ、再生可能エネルギーや省エネの最大限の導入を後押しする。日本が選択できる道はまだある。原発に依存しない社会に向けかじを切り直したい。

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