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特需の九州は運転手不足深刻 休日出勤で現場に

クルーズ船の客を待つ貸し切りバスの運転手。労働環境の改善を訴える=福岡市博多区の博多港で、山下恭二撮影

 急増する外国人観光客らによる特需でわく九州のバス業界が、深刻な運転手不足に直面している。約6割の会社が運転手の不足を訴えており、しわ寄せは休日出勤などで現場に向かう。長野県軽井沢町のスキーツアーバス転落事故を受け、国も旅行業者やバス会社への規制を強化する方針を示しているが、専門家は「早急に労働環境の改善に取り組まなければ新たな事故を招きかねない」と警鐘を鳴らしている。

 「右も左も分からない土地で正直不安です」。福岡市博多区の博多港。3月2日朝、中国人ら約2700人を乗せた大型クルーズ船の寄港を待つ貸し切りバスの男性運転手(57)が打ち明けた。男性は関東地方に本社を置くバス会社の新潟県の営業所で勤務していたが、運転手不足のため、1月に急きょ福岡への1年間の単身赴任を命じられたという。

 貸し切りバス事業は2000年2月の規制緩和で免許制から許可制になり、参入事業者が増加。九州でも事業所数が00年3月の221から15年3月には469まで倍増した。それでも昨今の外国人客の急増でバスが不足。自治体の要請に基づき九州運輸局から許可を受けた隣県などの事業者が臨時に営業区域を拡大し、しのいでいるのが現状だ。博多港には鹿児島や宮崎など南九州を朝早く出発して来たバスも並ぶ。

 特需のしわ寄せを受ける現場の運転手からは「OBや70歳過ぎの人が運転することもある」(42歳男性)、「休みの日に呼び出されることもある」(64歳男性)などの悲鳴が聞こえてくる。運転手を増やしたくてもバス会社間の競争も激しく、佐賀県のあるバス会社は「最近はなかなか希望者が集まらない。新規参入会社に取られている」と嘆く。

 九州運輸局の昨年10〜11月のアンケートでは、回答した190事業者のうち63%が「運転手不足」に悩まされていた。回答企業で働く約9300人の運転手の半数は51歳以上で、30歳以下はわずか3%。一方で賃金水準は低く、年収が300万円未満の事業者(回答は115事業者)が半数以上を占めた。

 貸し切りバス業界は、旅行業者から安価で受注したバス会社が利益を出すために安全コストを軽視する実態が指摘され、国は12年の関越道ツアーバス事故後、運賃基準を引き上げた。

 だが、あるバス会社の労組幹部は「その後も、バス会社によっては、旅行業者から継続して仕事を取るために値引きに応じたり、大きなバス会社に仲介料を払ったりして仕事の融通を受けている。運賃基準が見直されても運転手の待遇は改善されず、休みもなく緊張しっぱなし」と話す。

 北海学園大の川村雅則教授(労働経済)は「適正な運賃を得るためにも、貸し切りバス事業の規制緩和を見直し、一定程度経営基盤のある事業者を育てなければならない」と指摘。その上で「バス会社だけで安全を確保することは難しいので、(運転手の過労運転防止条件を定めた)厚生労働省の改善基準告示に罰則を設けるなどして労働環境を改善するとともに、運行経路や運賃を決める旅行業者の責任を問う仕組みを作ることが必要だ」と語った。【下原知広、尾垣和幸】

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