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鎮魂の祈り…大槌の住職、苦悩5年

3人が眠る墓の前で手を合わせる江岸寺の大萱生良寛住職=岩手県大槌町で2016年3月11日午前9時31分、和田大典撮影

 津波で市街地が壊滅し、人口の約1割に当たる1200人以上の死者・行方不明者を出した岩手県大槌町。11日朝、町中心部に近い江岸寺(こうがんじ)の住職、大萱生良寛(おおがゆう・りょうかん)さん(57)は静かに手を合わせた。檀家(だんか)約680人が犠牲になり、父秀明(しゅうみょう)さん(当時82歳)と、いずれ後を継ぐはずの長男寛海(ひろうみ)さん(同19歳)を失い、次女秀子さん(同24歳)は震災後に自殺。悲しみが癒えることはなかったが、いつかは前向きに生きられるよう願う。

津波に父と長男奪われ、次女は自殺

 町で最も檀家が多い寺だった。階段状に墓地が並んだ山の斜面を背負うように立ち、海岸までの距離は約700メートル。震災前は町の訓練で例年避難先に使われていた。

 2011年3月11日。地震発生後、地元住民らが次々と避難してきた。「大津波警報だから、山さ上がって」。大萱生さんは大声で誘導したが、足の悪いお年寄りたちは寺の周りに座り始めた。過去に津波で寺が大きな被害を受けたことはなく、やむをえず寺を開け、ストーブを用意していたところを津波に襲われた。

 高さ約6メートルの本堂の屋根まで達する洗濯機の中のような渦に、妻智子さん(57)と巻き込まれたが、2人とも運良く助かった。寺も火災で焼け、焼け跡からは3人の遺体が見つかり、中にいた20人余りが流されて亡くなった。寺に残った父と、愛知の大学から帰省中だった長男は、今も行方が分からない。

 「じいちゃんとひろに会いたい」。次女がそう書き残し、アパートの浴室で自ら命を絶ったのは、震災から100日過ぎた6月22日。東京で幼稚園教諭をしていた。「ばかなことを」。大萱生さんは一時、仮設住宅に閉じこもり、一日中、酒を飲み続けた。

 震災後は500回もの葬儀を執り続けた。檀家総代の赤崎潤さん(51)は「家族の葬儀を後回しにし、檀家に寄り添っていた。励まされた人も多いのではないか」と振り返る。

 寺の墓地には、この日も朝から遺族が訪れ、故人に花を手向けた。犠牲者の法要は午後に営まれる。この5年、「自分たちだけが何で生き残ったんだ」と苦しんだが、ようやく「しようがない」と思えるようになったという。今はプレハブの仮本堂も23年の十三回忌を目標に再建したい考えだ。【竹下理子】

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