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物流、ライフライン…非常時へ備え「BCP」

 2011年の東日本大震災では、物流網の寸断や工場被災で企業活動に大きな影響が出た。企業は教訓を生かし、BCP(事業継続計画)の作成や災害に強い部品供給網作りなどで、非常時への備えを強化してきた。震災5年の節目を迎え、企業は改めて非常時の対応を見直している。

     震災時にトヨタ自動車は部品メーカーの被災を受けて全面的な操業停止に追い込まれ、震災前の生産水準に戻るまでに数カ月を要した。こうした反省を踏まえ、約4000点の部品について膨大な生産情報を収集し、非常時に代替品を調達しやすい仕組みを構築してきた。

     しかし、1月に発生したグループ会社の愛知製鋼の爆発事故では、組み立てラインが6日間の停止に追い込まれた。約9万台の生産に遅れが生じ、部品供給網のもろさを露呈した。

     愛知製鋼が作る「特殊鋼」は、1000〜2000点の部品に使われる材料だ。成分の違いや加熱のタイミングなどメーカー独自のノウハウがある。愛知製鋼では非常時に他社に製造を委託するプランを用意していた。だが「ノウハウを事前に他社に渡せば自分たちの首を絞める」(愛知製鋼幹部)として、情報公開を最小限にとどめていたため、生産再開が想定外に遅れた。トヨタも、下請け企業が緊急時に企業秘密をどう扱うかの検討は不十分で、増井敬二専務役員は「事業継続計画の策定は道半ば」と反省する。

     今回の事故は、トヨタが強みにする「トヨタ生産方式」が災害時に裏目に出ることも改めて浮き彫りにした。在庫を極力減らしてコストを抑えるこの方式は、緊急時は部品の在庫不足で生産が維持できなくなる危険性も併せ持つ。トヨタは在庫と非常時対応のあり方を改めて議論していく考えだ。

     一方、震災時に沿岸部に近い工場が被災したため、各社は工場の移転や免震化も進めている。スズキは今後想定される南海トラフ巨大地震に備えて静岡県にある工場などを19年に高台に移転させる計画だ。また茨城県の工場が被災した半導体大手のルネサスエレクトロニクスは13年9月までに同工場で免震設備を導入。震災時は生産再開に3カ月かかったが、現在は1カ月で再開できる見通しだ。【永井大介、竹地広憲】

    BCP(事業継続計画)

     Business Continuity Planの略称。大地震や大津波などの自然災害、感染症のまん延、テロ、基幹システムのトラブルといった深刻な事件・事故が発生した際、企業活動や行政機能への影響を最小限にとどめるための計画。

     被害を受けた事務所や工場の代替施設の確保、指揮系統の確認、社員の安否確認を含む初動対応などを事前に定め、生産停止などのリスク低減を図る。

     2001年の米同時多発テロ以降、注目された。国内でも11年の東日本大震災などを教訓にBCPを策定する企業が増加。内閣府が2014年に行った調査では策定したと答えた大企業が約5割。中堅企業では25.3%にとどまっている。

              ◇

     震災時にライフラインを維持できるかどうかは、被災者の生活に大きく影響する。

     コンビニエンスストア大手のファミリーマートは、震災で弁当などの食品工場が被災。代替の調達先を手配できず、一部の店舗で欠品が発生した。このため12年以降、震度5弱以上の地震の際に、取引先の被災状況も含めた情報を全社で共有し、生産、供給体制を迅速に立て直す仕組みを作った。

     小売り大手のイオンも取引先の食品や日用品メーカー約50社と、出荷できる工場や倉庫の情報をインターネットで共有する仕組みを3月にスタート。千葉市にある本社機能が損なわれた場合に備えて「危機管理センター」を愛知県小牧市に設置した。

     石油業界では、震災時に灯油やガソリンなどの供給が滞った反省を生かし、原油から石油製品を作る精油所では首都圏直下型地震などが想定される地域で、製品タンクの耐震補強や液状化対策を実施。中継基地となる油槽所で非常用発電機の導入を進めた。

     このほか東京海上日動火災保険は、震災で自動車保険や火災保険の保険金請求が殺到し、事務処理が追いつかずに保険金の支払いまで最短で1週間かかったことを反省。事故受付システムを現地の代理店だけでなく、全社で受け付けられるようにして手続きのスピードを上げた。これらの取り組みで、保険金支払いまでの期間を最短で3〜4日に短縮できるようになった。

     金融機関は、預金者やその遺族が預金通帳や届け出印を紛失した場合でも、本人であることが確認できることを前提に預金払い戻しに応じたり、取引行以外でも1日10万円を上限に預金を引き出せるようにする方針だ。【岡大介、土屋渓】

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