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雑誌と新聞から移籍の2人が語ったこと

佐々木紀彦・「ニューズピックス」編集長

 メディアとジャーナリズムの現状と未来を考える「デジタルジャーナリズム・フォーラム2016」(同フォーラム実行委主催)が11、12の両日、東京都内で開かれた。東洋経済新報社のサイト「東洋経済オンライン」の編集長から経済に特化したネットメディア「ニューズピックス」の編集長に移籍した佐々木紀彦氏(36)と、朝日新聞記者からニュースサイト「バズフィード」日本版の創刊編集長となった古田大輔氏(38)の2人が登壇した討論会が注目を集めた。ウェブやスマートフォンが読者との大きな接点となるデジタル時代、ニュースやジャーナリストのあり方は、変わるのか、それとも変わらないのか。2人の「答え」は?

    なぜ新興ネットメディアに? 「裁量が欲しかった」

    ジャーナリストの安田浩一氏

     司会を務めたのは、「ネットと愛国」(講談社)など、「紙」のノンフィクション分野で活躍しているジャーナリストの安田浩一氏。最初に、2人はなぜ大手の新聞社や出版社を飛び出して、新興のネットメディアに加わったのかを尋ねた。

     佐々木氏は、「裁量の幅の広さ」を挙げた。東洋経済新報社のコンテンツを雑誌「東洋経済」に出すか、ウェブに出すかなどを采配(さいはい)しているのは、佐々木氏が所属したサイトの編集部ではなく、別の部署だったことなどが背景にあったのかもしれない。

     佐々木氏は「今の時代は、コンテンツだけでなく、テクノロジーとか、組織も、一から全部作らないと対応できない」と指摘。コンテンツを考えるだけでなく、ビジネスの方向性なども見据えた幅広い観点から、メディアを運営できる「いい場所」を得るためだったと説明した。

    古田大輔・「バズフィード」日本版創刊編集長

     一方、2002年に朝日新聞社に入社し、社会部や海外特派員などを経験してきた古田氏。学生時代から、利用者間で双方向のやり取りができるインターネットが好きで、朝日新聞のデジタル部門に進んだ。女子フィギュアスケートの浅田真央選手のソチ五輪での活躍などを追った「ラストダンス」など、写真、動画を組み合わせたイマーシブ(没入型)コンテンツなどに取り組んだが、自分が思ったほどは読者の間に広がらない。

     そうした時に、バズフィード関係者と知り合い、「自分がどんなコンテンツを作りたいか」ではなく「受け手はどんなコンテンツを受け取りたいか」から考える発想と、「読者にポジティブな影響を与える」という理念に共感して、移籍を決めたという。

    人材移動は起きるのか? 「収入のクロスは来ています」

     米国ほど活発ではないが、日本でも、伝統メディアの新聞から新興ネットメディアに移籍する人は出始めている。紙中心の伝統メディアとネットメディアを対立する存在として捉える見方も根強い。「紙」とネットの記者に違いはあるのだろうか。

     古田氏は、紙で取材や編集、企画のスキルを身に着けた人は、ウェブでも通用すると指摘し、対立を強調するのは誤りとした。

     一方、佐々木氏は「市場全体で見ると『食い合い』が確実にある」と指摘。ただ「個人のキャリアでみると、別に食い合うものではない」と話した。現在は、新聞など伝統メディアの給料と、新興メディアの給料の水準が近づいていく流れにあり、双方がクロス(交わる)する時期になれば、30代ぐらいからもっと移動を始めるだろうと推測。その動きが始まる時期は「今年からだ」と推測した。

     すると、古田氏は、バズフィード日本版の編集部20人(4月入社内定組を含む)には新聞社出身もいることを明かしたうえで、「うちは、はっきり言って(旧職場とバズフィードの収入面での)クロスは来ています」と付け加えた。

    紙とウェブ、ニュースは違うのか 「本質は変わらない」

     それでは、新興ネットメディアでは伝統メディアと、記事の中身や表現方法は変わるのだろうか? 古田氏は、ウェブでは「文体は変わる」と言い切った。

     これは、バズフィードは、下にスクロールしながら読むスマホの利用者を主に想定していることが影響している。新聞記事は、重要な部分を記事の最初の方に詰め込む「逆三角形」が通常のスタイルとなっているが、バズフィードは、記事を最後まで読み、フェイスブックやツイッターで共有、拡散してもらうことを目的としているため、内容が前半に偏らないように配慮している。また、先が読みたいと思ってもらえるよう、写真の配置などを工夫しているという。ただ、ニュースの中身自体は、紙でもウェブでも「本質的な部分は変わらない」。米ニューヨーク・タイムズ記者を経てバズフィードに移った女性編集者の「ネタを見つけて、調べ、人に会い、質問し、証言を得て、中身を書く。ニュースはニュースだ」という言葉を紹介した。

     佐々木氏も「紙のいいエッセンスと、新しいテクノロジーとかウェブ的なものを融合させることが大事」と強調。「紙でもウェブでも、センスが優秀な人は、ほとんどどっちでも通用する。(必要なことは)8、9割同じで、細かいテクニック論はあまり本質じゃない」と話した。【尾村洋介/デジタル報道センター】

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