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神戸女児殺害

49歳被告に死刑…残虐性を重視 地裁判決

 神戸市長田区で2014年9月、小学1年の女児(当時6歳)が殺害された事件で、殺人とわいせつ目的誘拐、死体損壊・遺棄の罪に問われた君野康弘被告(49)の裁判員裁判の判決公判が18日、神戸地裁であった。佐茂剛裁判長は「女児を性的欲望の対象にして生命を奪い、遺体をないがしろにした極めて悪質な犯行」と述べ、求刑通り死刑を言い渡した。弁護側は即日控訴した。

     裁判員裁判が導入された09年以降、殺害された被害者が1人で死刑判決が出たのは4例目。公判で、君野被告は殺害や死体の損壊・遺棄の起訴内容は認めた一方、誘拐時のわいせつ目的は否認し、計画的な犯行ではなかったと主張。死刑が選択されるかや、わいせつ目的が認められるかが争点だった。

     佐茂裁判長は死刑とした理由について、「殺害被害者が1人であっても、犯行全体として生命軽視の姿勢が甚だしく顕著である場合はあり得る」としたうえで、殺害手段の残虐性や執拗(しつよう)さに言及。遺族の処罰感情や地域住民に与えた不安感も加味し「死刑は十分許容される」と判断した。

     誘拐時のわいせつ目的についても、事件前にインターネットの成人向けサイトを視聴し続けたことなどを挙げ、「女児に声をかけた時点で自宅に誘い入れることができれば体を触れると考えていたと推認できる」として認めた。殺害動機については、「騒がれることなくわいせつな行為をし、発覚を免れるため。自己保身だけでなく、性的欲望を満たすことも直接の動機で、その身勝手さは例をみない」と強く非難した。

     弁護側は最終弁論で「女児には偶然出くわし、当初はわいせつ行為をしようという気持ちはなかった。飲酒の影響で衝動的に行動してしまった」と主張。重くても無期懲役として、死刑回避を求めていた。

     この点について佐茂裁判長は、殺害の計画性は否定したものの、「わいせつ目的が動機であることを考えると、偶発的とはいえず、殺意は極めて強固だった」と判断。飲酒の影響についても「行動の主体性に影響を与えたとまではいえない」と否定した。

     判決によると、君野被告は14年9月11日午後3時半ごろ、同区名倉町2の路上で「絵のモデルになってほしい」とわいせつ目的で女児に声をかけ、アパート自室に誘い込んだ。その後、首をナイロンテープで絞め、包丁で刺すなどして殺害。同14日ごろまでに遺体を切断してアパート近くの草むらに捨てた。【神足俊輔】

    遺族感情を最大考慮

     君野康弘被告(49)に対し、神戸地裁(佐茂剛裁判長)は求刑通り死刑を言い渡した。被害者が1人の事件で、最大の争点は量刑だったが、判決は「殺人を中心とする犯行の中でも極めて悪質」と指摘した。事件の残虐性や遺族の処罰感情を最大限に重く捉えた司法判断と言える。

     最高裁は1983年、「永山基準」と呼ばれる死刑の適用基準を示している。被害者の数が重視され、殺害された被害者が1人の場合は死刑が回避される傾向にあった。

     一方、奈良女児誘拐殺害事件の奈良地裁判決(2006年)は遺族に遺体の写真を送りつけるなど残虐性が問われ、被害者が1人でも死刑を選択した。また、被害者は2人だったが、山口県光市の母子殺害事件の最高裁判決(12年)では「死刑回避を相当とするような特に有利にくむべき事情」がなければ死刑を科すとの判断が確定した。犯罪被害者保護法の制定を受け、遺族らの感情を重視する傾向も強まっている。

     神戸学院大の内田博文教授(刑事法)は、この判決が死刑選択の基準を緩和したと指摘したうえで、今回の判決は「動機や犯行態様が強く考慮されたのではないか。裁判員裁判では被告像が重視される傾向があり、今回はかなり厳しい評価を下した印象だ」と話す。性犯罪が関係する裁判員裁判では特に、これらの事情を重視する判断が多いという。

     裁判員裁判が導入された09年以降、被害者が1人で死刑が求刑されたケースは3件。いずれも地裁判決では死刑が言い渡された。ただ、うち2件は控訴審で判断が覆り「被害者は1人で、計画性もなかった」などとして無期懲役に減刑した。弁護側は即日控訴しており、今後は上級審の判断が注目される。【井上卓也、神足俊輔】

     【ことば】神戸市長田区の女児殺害事件

     神戸市長田区で2014年9月11日、市立小1年の女児(当時6歳)が学校から帰宅して遊びに出たまま行方不明になり、同23日、自宅近くの草むらで、ポリ袋に入った切断遺体の形で見つかった。兵庫県警は翌日、近くの無職、君野康弘被告(49)を死体遺棄容疑で逮捕。ポリ袋には被告の通院先の診察券が入っていたなど不自然な点もあったため、神戸地検は約3カ月間の鑑定留置で精神鑑定を実施。責任能力があると判断し、昨年1月に殺人などの罪で起訴した。

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