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教科書検定 多面的思考の育成こそ

 教科書は整理された基礎知識だけではなく、多様な思考へヒントを与える手引でありたい。

     文部科学省は来春から使われる高校教科書の検定結果を公表した。

     領土に関する記述が増え、政府の統一見解記述を求める検定意見もついた。2014年に同省が行った教科書の指針・学習指導要領解説の改定と、新検定基準を反映している。

     要領解説の改定は、竹島、尖閣諸島が日本固有の領土であること、尖閣諸島には領有権問題は存在しないことなどを理解させるよう求める。

     また新検定基準では、近現代史で通説的見解がないものはその明示や、政府の統一的見解に基づいた記述などが必要になった。

     安全保障関連記述でも神経をとがらせたようだ。集団的自衛権に絡み「解釈改憲」の表現に意見がつき、「批判するさい、解釈改憲という言葉が使われる」に修正された。

     社会や国際問題の学習で、政府の見解や取り組み姿勢を踏まえるのは不可欠だ。しかし、ただ規定された基準に記述が沿ってさえいればいい、ということではない。

     領土をめぐる重層的な経緯や国際的な意見なども踏まえ、多様な視点で考えたい。そうした力を養うのは教科書の記述より、むしろそこから生徒の関心を引き出し、発展的な学びへ導く教師だろう。基準で締めつけて、教育現場を萎縮させるようなことがあってはならない。

     それは今後にも関わる。

     高校教育は転換点にある。暗記学力中心の大学入試を改め、教科・科目も改編しようと中央教育審議会が論議を進めている。

     例えば、22年度から実施予定の次期学習指導要領では、新たな必修科目に「歴史総合」や「公共」(いずれも仮称)などが想定されている。

     「歴史総合」は、授業が尻切れになるなどして学ばないままになることが少なくない近現代史を中心に、日本と世界の動きを関連づけて学ぶ。資料調べや討論を重視する。

     「公共」は高校生有権者の登場を受け、主体的な社会参加の力を育てる主権者教育だ。社会保障や税、消費問題など、幅広い実践的テーマも学ぶという。

     これらの科目が扱うテーマは当然「現在進行中」の政治、社会、外交問題などにも密接に結びつく。

     多面的なとらえ方や着想、異なる意見からも学ぶことが肝要で、「政府統一見解」で足るものではない。

     「歴史総合」や「公共」においても、必要以上に政府見解などを強調したり、一律の基準をあてはめたりして教科書づくりや授業が萎縮するようなことがあっては、改革は絵に描いた餅になりかねない。

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