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マッチ

昔の隆盛 今、新発想で 神戸の「ナカムラ」

箱詰機で小箱にマッチの軸を詰める作業

 人間が他の動物と違うところは、火を使えることだという。古代、火打ち石や木と木の摩擦で火を起こしたことを考えると、マッチは、なんて簡単で偉大な発明だったのか。ところで、このマッチ、最近とんと見かけないのだが……。

     神戸市長田区のマッチ製造販売会社「ナカムラ」社長の中村和弘さん(51)を訪ねた。同社は1910(明治43)年創業。中村さんは5代目だ。

     大学卒業後、いったんアパレル業界に就職したが、専務だった父から「家業を継いでほしい」と言われて30歳で入社。しかし将来が見通せず、他事業への転向も考えた。「その勉強会で、他社の先輩から『マッチはまだまだいけるんじゃないか』というアドバイスを受けた。それで、とことんやってみようと決意しました」

     そこで考えたのが、受注請負型から企画発信型への転換だ。「企業などからの依頼で販促品として配るマッチを作るだけでなく、マッチ会社自身が企画して、面白くて良い商品を出して売っていこうと思いました」と中村さんは話す。

     その“成果”となる多彩な商品を見せてもらった。

     マッチ箱の表と裏に2コマ漫画を載せたマッチ、バースデーケーキのろうそくに付けるために長い軸木にした「バースデーマッチ」、ろうそくとマッチのセット……。そのうちの一つ「レトロラベル缶マッチ」は明治・大正時代の懐かしいラベルが1缶ずつに貼っている。マッチがインテリアに適したグッズになるとは、と感心した。

         ◇

     一般社団法人「日本燐寸(マッチ)工業会」(神戸市中央区)などによると、英国のウオーカーという人が1827年に、まさつで火を着けるマッチを発明した。その後、スウェーデンで小箱に赤リンを塗った安全マッチが発明されて世界に広まった。

     明治の初めには日本にもマッチとその技術が輸入され、当時、アジアで唯一のマッチ生産国に。「神戸港からは華僑を通じて中国などにも輸出されました。マッチは繊維製品、銅と並ぶ日本の重要輸出品だったんですよ」と中村さん。

     輸出のため神戸港が近かったこと、温暖少雨な瀬戸内海の気候が乾燥工程の多いマッチの製造に適していたことで、兵庫県にメーカーが集中。戦後には輸出量は激減したものの「マッチという生活必需品に広告を付けて配る」というコンセプトの広告マッチが普及した。

     しかし、ライターや自動着火装置の普及、禁煙ブームで、今やマッチは生活必需品ではなくなった。取り巻く環境は厳しさを増すばかりで、マッチの総生産量は、戦前のピーク(1907年)の約90分の1、戦後のピーク(1973年)の約60分の1にまで減った。

     それでも中村さんの新商品への意欲は途切れることがない。今年も、フランスの紙のお香とマッチを合わせた「マッチ&パピエル」を発売した。紙を燃やすと白檀に似た香りが漂う。全く新しい領域への挑戦だ。中村さんは「アウトドアや誕生日、防災など、お客様の使うシーンに合わせた商品づくりを続けます」と意欲的に語った。

         ◇

     アンデルセンの童話「マッチ売りの少女」が世に出たのは1848年だった。今回の取材で気づいたが、マッチの誕生からまもなくの時期に出版されたことになる。悲しい結末の物語だが、マッチが作り出す火が人々の喜びであり希望だった時代のことを思い、気持ちが優しくなった気がした。【編集委員・三野雅弘】=次回は4月4日


     ◆プレゼント

     「株式会社ナカムラ」から、「レトロラベル缶マッチ4個セット」とフランスの紙のお香とマッチの「マッチ&パピエル」(計2268円)を抽選で5人にプレゼント。住所、氏名、電話番号、メールアドレスのほか、「3月のお題」の回答を書いて、〒530−8251(住所不要) 毎日新聞「兵庫五つ星・缶マッチ」係まで。31日必着。当選者のみに連絡します。

     【3月のお題】

     東日本大震災5年を過ぎました。東北地方にある場所や施設などのうち、あなたが他人に薦めたいところを一つだけ書いてください。被災地の多くの自治体で人口減が顕著になるなか、観光で被災地に足を運ぶことも大切な復興への手助けになると考えています。


    ナカムラ「レトロラベル缶マッチ」

     明治・大正時代に実際に使われたラベルデザインを復刻して貼った缶マッチ。飛行機や自転車など40種類があり、インテリアに最適で、缶のため防湿効果が高い。ふたの内側にマッチを擦る部分があるため、安全に配慮して中のマッチは下向きに入れている。1缶(マッチ100本入り)で324円。

    株式会社ナカムラ

    神戸市長田区浜添通6の1の2

    電話078・671・2561

    ホームページ http://www.nakamura-kobe.co.jp/


    五つ星ひょうご

     県と県物産協会は、兵庫五国の豊かな自然や歴史・文化を生かした“地域らしさ”と“創意工夫”を兼ね備えた逸品を「五つ星ひょうご」に選定し、全国にPRしています。「レトロラベル缶マッチ」は2013年の選定商品です。15年度は77品が選定されました。

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