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今も母、悲しみ癒えず…長男亡くし

長男を亡くした母親は「薬害エイズは終わっていない」と語った=東京都千代田区で2016年3月16日、徳野仁子撮影

 非加熱血液製剤でHIV(エイズウイルス)に感染した血友病患者らが国と製薬会社に賠償を求めた薬害エイズ訴訟の和解から、29日で20年になる。だが、薬害禍で肉親を失った遺族の悲しみは癒えず、被害者は今も病と闘う。「薬害エイズは終わっていない」。原告団や弁護団は26日、東京都内で和解20周年記念集会を開催する。【古関俊樹】

    次男は闘病生活

     居間のテレビの横に、笑みを浮かべる少年の写真と骨つぼがあった。「1人でお墓に入れるのはかわいそうだから。いつも一緒にいるんです」。1994年、血友病治療で使った血液製剤が原因で、HIVに感染した18歳の長男を亡くした母親(64)はつぶやいた。同様に感染した30代の次男は、今も闘病中だ。

     長男は中学生の時、次男は小学生の時に感染が判明した。エイズへの偏見、差別は過酷だった。血友病治療で入院した長男に若い研修医は触ろうとしなかった。病院から食べ残しを汚物入れに捨てるように指示された。

     理数系が得意だった長男は工学部がある大学に進んだ。だが、次第に体調が悪化。食事ができなくなり、衰弱して4カ月しか通えなかった。入院中は腹痛などで苦しんだが、決して不安を口にしなかった。友人とのクリスマスパーティーのため、許可を得て外泊する前日に亡くなった。

     母親は長男の死後、集団訴訟の原告になった。96年2月、当時の菅直人厚生相が被害者に初めて謝罪する場にも立ち会った。「訴訟が泥沼化しかねない状況だったので、国が和解に応じてほっとした」と振り返る。

     それから20年。薬の開発や治療法の進歩でエイズの発症を防ぐことができるようになった。C型肝炎ウイルスにも感染している次男は自宅で仕事をしながら治療を続けている。「今も被害は続いている。薬害エイズは終わっていない」

    「恨んでいないが同じ被害止めて」…男性患者

     関東地方に住む男性(51)は「血液製剤は魔法の薬だった。恨んではいない」と語る。幼い頃、ふとしたことで内出血し、関節がはれるたびに病院で輸血を受けた。血液製剤ができると、11歳の頃には自宅で注射して治療できるようになり、負担は大きく軽減された。

     20代で妻と結婚。子どもも生まれた。薬害エイズは社会問題化していたが、仕事が忙しく感染を考える余裕はなかった。体調が悪化して入院したのは31歳の誕生日の直前。肺炎だった。検査でHIV感染を知らされた。「自分はけろっとしていたが、おやじは泣いていた。親不孝しました」

     その後、仕事を辞め、感染を知った妻は離れていった。自暴自棄になり、ウイスキーのボトルをあおる生活を10年近く続けた。40歳を過ぎ、母親の介護を機に酒をやめたが、2年前に自身に食道がんが見つかった。手術を受け、薬でHIVを抑えながら自宅で療養している。

     最近、老後の不安が頭をよぎる。「ここまで生きるとは思っていなかった。自分たちを教訓にし、同じような被害を出さないでほしい」

    ◇薬害エイズ◇

     1980年代、出血が止まりにくい血友病の患者が使用する非加熱血液製剤にHIV(エイズウイルス)が混入し1400人以上が感染した。HIVはヒトの免疫細胞を壊すウイルスで、進行するとエイズ(後天性免疫不全症候群)を発症する。製薬会社は混入の疑いを知りながら非加熱製剤を売り続け、厚生省(当時)は安全な加熱製剤が承認された後も非加熱製剤の販売中止などの措置を怠った。被害者は89年に国と製薬会社5社に損害賠償を求めて東京、大阪地裁に提訴。96年3月、国と製薬企業が原告1人当たり4500万円を支払うなどの内容で和解が成立した。

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