メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

歴史の教訓に学べ…米国要請で拡大の恐れ

第一次大戦中に戦死した海軍兵の名を刻む常夜灯の前で、安保法について話す中間照雄さん=大分県宇佐市の宇佐神宮境内で2015年10月20日、砂間裕之撮影

第一次大戦中、対象外地域派遣で海軍犠牲

 大分県宇佐市の「宇佐の文化財を守る会」会長の中間照雄さん(77)は、29日施行された安全保障関連法に危機感を募らせている。第一次大戦中、日英同盟に基づき地中海に派遣され、戦死した大分県出身の海軍兵らを調査する中で、地中海が同盟の対象地域外だったにもかかわらず、英国などの再三の要請で派遣された経緯を知ったからだ。中間さんは「地中海派遣と同様、米国の要請で安保法がどんどん拡大する恐れがある。歴史の教訓を学ぶべきだ」と訴える。【砂間裕之】

 調査のきっかけは、会員の一人が宇佐市の宇佐神宮境内の参道で、地中海派遣の戦死者名を刻む常夜灯を見つけたこと。高さ約3メートルの一対で、それぞれ「地中海」「遠征記念」と記し、7人の戦死者名が刻まれていた。

 文献や中間さんによると、日英同盟は今で言う集団的自衛権行使の対象地を極東や英国の植民地だったインドと規定していた。だが、英仏など連合国の要請で海軍は1917(大正6)年2月、計9隻の第2特務艦隊を編成し、地中海のマルタ島に派遣した。商船などの護衛にあたったが、同年6月、駆逐艦「榊」が魚雷を受けて大破し、59人が戦死した。

 常夜灯に刻まれた7人は「榊」の乗組員で、いずれも大分に関係があるとみられる。中間さんたちはうち2人の遺族にたどり着いた。岡部秋義2等機関兵曹の弟の孫で、同市安心院(あじむ)町の岡部義博さん(66)は「葬儀は村葬として営み、小学生も参列したと聞いた。日英同盟を結んでいたから、地中海まで行かざるを得なかったのではないか」と話す。

 調査中の昨夏、安保法の国会審議が山場を迎えた。中間さんは「同盟の相手が英国から米国に変わっただけ。安倍晋三首相は集団的自衛権の行使は限定的と強調するが、地中海派遣も日英同盟の対象地域外への派遣だった」と危機感を持った。国会前デモに2回駆けつけ、座り込みもした。

 小学校教諭だった中間さんは、悲劇を繰り返さないため、平和教育にも熱心に取り組んだ。7歳の時、終戦を朝鮮で迎え、混乱の中、あやうく帰国できなくなりそうになった経験があるからだ。

 中間さんは言う。「今までは憲法9条があるから大丈夫と思っていたが、安倍さんのやり方を見ると何でもあり。知らぬ間に安保法が拡大し、アリの一穴にならないよう声を上げたい」

日英同盟下、要求エスカレート

 防衛省防衛研究所の戦史研究年報第1号(1998年)の永井煥生(あきお)主任研究官の論文によると、14年の大戦勃発以降、日英同盟を軸にした陸海軍への欧州派遣要請が英仏露から相次ぎ、海軍は当初、太平洋とインド洋での護衛任務に協力する。

 欧州派遣については、対象地域外のため当時の外相、加藤高明が「軍の唯一の目的は国防。遠く国外に出征するのは目的外」などと拒絶した。

 だが、その後も派遣要請は続き、ドイツの商船破壊が激しくなった17年、地中海派遣を決定した。日本は軍事物資供給や経済面でも貢献したが、英国に「同盟の義務以外は一切協力しない」などと迫られるなど圧力を受けることもあったという。

 地中海派遣を巡る英国との交渉過程は、同盟国の要求が次第にエスカレートすることを示唆している。

関連記事

毎日新聞のアカウント

話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. NHK 「障害者を感動話に」方程式批判
  2. 埼玉河川敷遺体 逮捕少年に「パズル」 そのグループとは
  3. NHK 「貧困女子高生」に批判・中傷 人権侵害の懸念も
  4. 高畑裕太容疑者 24時間テレビだけで損害金1000万円超
  5. ドラマ 障害者親子のすれ違う思い描く NHKEテレ「バリバラ」が2作目

編集部のオススメ記事

のマークについて

毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

[PR]