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(7)イスラエル、日本のアニメ・漫画ファンのイベント開催

エルサレムで開催されたアニメファンのイベントで、サインに応じる声優の古谷徹さん。長蛇の列の二番目は、イスラエル兵士だった=2016年3月24日、エルサレムで、大治朋子撮影

 パレスチナとの紛争現場というイメージが強いイスラエルでこのところ、日本のアニメや漫画の人気が高まっている。3月24日、イスラエル各地からアニメファンがキャラクター姿に仮装してエルサレムに結集するというイベント「HARUCON2016」の会場をのぞいてみた。

 「HARUCON」とは、春のコンベンション、の意味で、英語と日本語の造語。主催者は「AMAI」(The Association for Manga and Anime in Israel)という組織だ。代表のオリ・マルコビッチさん(27)によると、AMAIは2008年から、仮装するユダヤ教のお祭り「プリム」(ユダヤ人を虐殺の危機から救った女性エステルの故事に由来するユダヤ教の祭り)に合わせて毎年このイベントを開催していて、今年で9回目になる。参加者は、初回は1300人だったが今年はその3倍近い3500人になった。特別ゲストを招いてのトークショーやサイン会、アニメキャラにふんした手作りの衣装を競うコスプレ・コンテスト、各種ゲーム大会やアニメ関連グッズの販売など盛りだくさんだ。

 今年の特別ゲストは声優、古谷徹さん(62)。古谷さんといえば、「巨人の星」の星飛雄馬や「機動戦士ガンダム」のアムロ・レイ役など大ヒットを飛ばしてきた声優界の大御所。私も中学生のころ、ガンダムを毎週、テレビで見ていた。繊細で多感な少年、アムロの切ない恋心や反抗心、もろさや危うさが古谷さんの声を通じて生き生きと描かれ、従来の強くてマッチョな「単純ヒーロー像」と一線を画す新鮮さが魅力的だった。

 マルコビッチさんによると、ファッション・コンペやグッズ販売されているものの大半は日本のアニメや漫画のキャラクター関連。それでも日本から特別ゲストを招くことができたのは今年が初めてだという。「ずっと願っていたのだけれど、日本のプロの方に来てもらえるような本格的なイベントかといわれると自信もなくて。でも2014年の10月にエルサレムで開かれた日本関連のイベントでイスラエルの日本大使館の方と知り合いになり、その支援を受けて今回の招待につながりました」

 2014年10月、在イスラエル日本大使館はエルサレムで日本文化を紹介するイベント「ジャパン・カルチャー・ウィーク」を開催。そこにAMAIも参加し、アニメキャラクターなどのコスプレを披露した。これが大使館との「縁」につながったという。

 トークショーに登場した古谷さんは、会場で熱烈な歓迎を受けた。舞台でガンダム・アムロ少年の名ぜりふ「おやじにもぶたれたことないのに」とか、初恋相手の女性の名前を「マチルダさーん」と叫ぶシーンを再現すると、ほとんど絶叫状態の声が沸き起こり、大興奮に包まれた。古谷さんは日本語で言ったのだが、多くのファンはテレビなどで日本語をある程度理解していて、特にこういう「有名なフレーズ」は、知っている人が少なくないのだという。

 興味深かったのは、マルコビッチさんが語った「オタクとイスラエルの関係」。イスラエルでは、人前で大人がアニメを見たり漫画を読んだりしていると「子供っぽい」とか「オタク」という「冷たい視線」を浴びることが少なくないという。高校を卒業した男女が兵役義務に就くイスラエルでは、兵役後は「大人」という暗黙の了解なり認識が自他共に共有されるそうだ。他方、イスラエルではアニメや漫画は「子供の見るもの」というイメージが依然として強く、兵役後、つまり20代以降の青年たちがアニメや漫画にはまるというのは、どこか「後ろめたさ」すら伴うという。

 だから「日本に行って、電車の中や本屋で、真面目なスーツ姿の人たちが無心に漫画を読んでいるのを見て、すごいって感激して。イスラエルもそんなふうになったらいいなって思っているのです」。マルコビッチさんは、うらやましそうに話していた。

 会場には、アニメ「犬夜叉(いぬやしゃ)」のキャラクターの衣装をまとった女性の2人組、ダニエルさん(19)とシアさん(19)がいた。犬夜叉は、イスラエルでテレビ放送されている人気アニメの一つ。イスラエルの言語ヘブライ語やロシア語の字幕をつけて放映されている。2人とも、6歳ごろからテレビで「犬夜叉」など日本のアニメを見るようになり、今では少し日本語も話す。ダニエルさんは現在、イスラエル軍で兵役中だが、退役後も「アニメファン」をやめるつもりはないという。

 ゲーム会場もあり、各テーブルには、キャラクター衣装をまとったまま、日本のゲームで遊ぶ若者たちの姿であふれていた。一角にいたのは、オフェル・ツイボニさん(32)。イスラエルで囲碁を教えている。兵役時代の2002年、英訳された日本の漫画「ヒカルの碁」を読み、囲碁の世界に魅せられた。国内のトーナメントで上位入賞し、その副賞で2007年には日本を訪れている。

 「日本のアニメや漫画には、必ずと言っていいほど『善い心』を持った正直で誠実な人物が現れ、心を温めてくれる。宮崎駿監督の作品は特に好きで、大ファンです」。ツイボニさんはそう語り、囲碁を通じて「日本の心」を若者に伝えていきたいと話していた。

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