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毎日小学生新聞から

先輩からの手紙/173 バイオリニスト・前橋汀子さん/中

バイオリニストの前橋汀子さん=内藤絵美撮影

すべては音楽おんがくのために 不自由ふじゆう生活せいかつでも目的もくてきひと

 バイオリニストの前橋汀子まえはしていこさんは、高校こうこう年生ねんせいだった1961ねんにあこがれの、ソれんのレニングラード(いまのロシア・サンクトペテルブルク)へ音楽おんがく修業しゅぎょうました。きびしい生活せいかつでしたが、そこにはゆたかな芸術げいじゅつがあふれていました。【出水奈美でみずなみ

    だい楽章がくしょう あこがれのソビエト

     横浜港よこはまこうふねて、汽車きしゃ飛行機ひこうきいで1週間しゅうかん前橋まえはしさんは、ようやくレニングラードのみしめました。いよいよ日本初にほんはつ留学生りゅうがくせいとして、レニングラード音楽院おんがくいんいまのサンクトペテルブルク音楽院おんがくいん)での学生生活がくせいせいかつはじまりました。

     現地げんちふゆは、最低気温さいていきおん氷点下ひょうてんか30にもなるきびしいさむさです。せっけんやトイレットペーパーにもこまる、モノ不足ぶそく時代じだいでした。てつパイプのベッドがならりょうで、言葉ことば宗教しゅうきょうちがひとたちと一緒いっしょ寝起ねおきをしました。

    レニングラード音楽院でワイマン先生(右)のレッスンを受ける=前橋さん提供

     りょう留学生りゅうがくせいは、当時とうじのソれんちか社会主義しゃかいしゅぎくに、つまり、ひがしドイツ(当時とうじのドイツはひがし西にしかれていました)、ベトナム、ポーランド、ルーマニア、中国ちゅうごくなどからあつまっていました。当番制とうばんせい料理りょうりつくっていましたが、風習ふうしゅうはさまざま。大変たいへんなことをかぞえたら、きりがありませんでした。それでも、音楽おんがくまなびたいというこころざしはみなおなじ。前橋まえはしさんもあさきて、音楽院おんがくいんかよいました。部屋べや階段かいだんおど転々てんてんとしながら、練習れんしゅうれました。

     「どんなにきびしい環境かんきょう不自由ふじゆう生活せいかつでも、だれもがひとつの目的もくてきかって必死ひっしでした。つらくても練習れんしゅうをしていると集中しゅうちゅうできました。すべては音楽おんがくのために。そんな毎日まいにちでした」

     当時とうじのソれんは、芸術げいじゅつ黄金期おうごんきでした。バイオリニストは恩師おんしのワイマン先生せんせいにオイストラフ、ピアニストのリヒテル、チェロのロストロポービチ、指揮者しきしゃのムラビンスキー。まばゆいばかりのスターがそろっていました。かれらの演奏えんそうれ、指導しどうけることもできました。

    チェロ奏者のロストラポービチ(右)と=前橋さん提供

     それだけではありません。バイオリニストにとって重要じゅうようなレパートリー、チャイコフスキーの「バイオリン協奏曲きょうそうきょく」のレッスンをけたときのことです。

     先生せんせい開口一番かいこういちばん、こういました。

     「チャイコフスキーのオペラ『エフゲニー・オネーギン』はましたか? ないとけませんよ」

     さらに、先生せんせいはオペラの原作者げんさくしゃプーシキンの暗記あんきすることをもとめました。プーシキンが決闘けっとうをした場所ばしょにも、ふかゆきをかきわけながら、れていってくれました。

     芸術作品げいじゅつさくひんまれた土地とち気候きこう風習ふうしゅう歴史れきしはだかんじ、吸収きゅうしゅうできる日々ひび

     「ちかくにはエルミタージュ美術館びじゅつかんがあり、歌劇場かげきじょうもある。一流いちりゅう芸術げいじゅつ本物ほんものれることの大切たいせつさをりました。おおきなエネルギーになりました」

     ソれんごした3年間ねんかん一度いちど日本にっぽんかえることはなく、電話でんわをかけることもありませんでした。勉強べんきょうだけに熱中ねっちゅうする10だいごしたのです。


    公演情報こうえんじょうほう

     「前橋汀子まえはしていこ軌跡きせき」4がつ12にち)19東京とうきょう上野うえの東京文化会館小とうきょうぶんかかいかんしょうホール。チケットはSせき4100えん、Aせき3100えん、25歳以下さいいか1500えん東京とうきょうはる音楽祭おんがくさいチケットサービス(03・3322・9966)


     〜きみたちにつたえたいこと(2)〜

    本物ほんものれてください」

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