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社説

ヘイトスピーチ 根絶へ政治の意思示せ

 特定の人種や民族に対する差別的言動を街頭で繰り返す「ヘイトスピーチ」を止めようとする法案が、今国会で審議される見通しになった。

     ヘイトスピーチは、「殺せ」「出て行け」といった乱暴な言葉で罵倒や中傷し、差別感情をあおり立てる。人権侵害であり、到底許されないが、ヘイトスピーチを繰り広げる団体の活動は抑え込めていない。

     法務省が初めて行った実態調査では、昨年9月までの3年半で全国で1152件のヘイトスピーチが確認された。1日1件に近い数字で、民主主義の国として恥ずべきことだ。

     民主党(現民進党)などが国会に提出した人種差別撤廃施策推進法案に続き、自民、公明両党はヘイトスピーチ解消に向け法案を出した。ヘイトスピーチを止めるため、与野党で法制化の協議を急ぐべきだ。

     東京や大阪など在日韓国・朝鮮人が多く住む地域でヘイトスピーチと呼ばれるデモが数年前から激化し、全国に広がった。

     捜査当局などは、現行法の範囲で違法行為があれば取り締まってきたが、ヘイトスピーチは沈静化していない。法務省がヘイトスピーチを人権侵害と位置づけ、団体の元代表にやめるよう勧告したのは昨年12月だ。それでも強制力はない。

     厳格な対応ができない背景には、現行の法制度では、ヘイトスピーチそのものを違法行為と認定できないことがある。一方、政府は、「表現の自由」との兼ね合いで直接的な法規制に慎重な姿勢を示してきた。

     国連人種差別撤廃委員会は2014年、日本政府に対し、ヘイトスピーチ問題に毅然(きぜん)と対処し、法律で規制するよう勧告した。

     国内からも政府の対応を促す声が強い。大阪市は今年1月、ヘイトスピーチの抑止を目指す全国初の条例を成立させた。国に対し、表現の自由に配慮しながらも、法規制など適切なヘイトスピーチ対策を求める意見書を採択する地方議会は300を超えた。国際社会の信頼を失いかねないとの危機感がそこにはある。

     ヘイトスピーチは、個人の尊厳を大きく侵害するだけではない。子供などは強い恐怖感を抱く。表現の自由は大切な権利だが、ヘイトスピーチは明らかな権利の乱用だ。

     与党案は、ヘイトスピーチを不当な差別と位置づけた。より広範な差別を規制対象とし、「禁止」を明確にした野党案と開きはあるが、罰則を伴わない点は共通する。拡大解釈で表現の自由が脅かされることのないようヘイトスピーチの定義を明確にしたうえで、道路でのデモや公共施設の使用を止められるような実効性のある法律にすべきではないか。政治の強い意思を示すべきだ。

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