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防災拠点、耐震遅れ 役所や病院使えず

被災した宇土市役所=熊本県宇土市で2016年4月16日午前9時59分、本社機「希望」から梅村直承撮影

 熊本地震で役場や病院などの防災拠点自体が損壊し、使用不可能になるケースが出ている。被災時のとりでなのに、財政難などで耐震が万全でないという事情が背景にある。

 熊本県宇土(うと)市の本庁舎は16日未明、コンクリート造り5階建ての4階の天井部分が崩れ、はりが落ちて大きくゆがんだ。1965年建造で、約10年前の耐震診断により震度6強に耐えられないと判定され、ようやく昨年、耐震改修計画を検討し始めたばかりだった。市担当者は「財政上の問題で改修が遅れた」と釈明する。

 同県益城町も古い庁舎だが耐震改修が済み、震度7に耐えられるはずだった。だが14日の前震で庁舎にひびが入ったり窓が開閉できなくなったりした。さらに16日の本震で電気がストップ。役場横に配備した電源車も倒れた。建物強度への懸念や電気が使えないことから、600人以上が避難する町保健福祉センターの児童館に災害対策本部を移し、約50平方メートルにシートを敷いて椅子と机を置いて災害対応に当たる。ある職員は「耐震補強をしたので、使えなくなるとは思わなかった」と話す。

 医療機関でも、熊本市の防災拠点施設に指定されている熊本市民病院で天井の一部崩落などがあり、「倒壊する恐れがある」として使用を中止。入院患者約300人は県の防災ヘリコプターや救急車で他の病院に搬送された。

 同病院は46年開設。79年完成の南館が耐震基準を満たしておらず、市議会特別委員会が13年に「建て替えが妥当」との報告をまとめた。市は15年度に12階建て免震病棟を着工する計画だったが、133億円だった建設費の見積もりが資材高騰などで209億円に膨らみ、大西一史市長が昨年1月に着工延期を表明した。病院関係者は「地震時に患者を治療できないのは残念だが、安全を考えればやむを得ない」と肩を落とす。

 しわ寄せを受けたのが、県の基幹災害拠点病院の熊本赤十字病院(熊本市)。けが人が殺到し、重症度に応じて転院可能な患者は県内外の医療機関に移ってもらう措置を取った。担当者は「病床数や備蓄医薬品などにも限界がある。想定外の患者数で、市民病院などで患者の受け入れができなくなったことも少なからず影響している」と話す。

 防災拠点となる公共施設などの耐震化について、国土交通省幹部は「特に庁舎の遅れが問題」と指摘する。限られた予算の中で学校などが優先され、「役人の施設は後回しにされがち」(総務省幹部)という。

 総務省消防庁の14年度末現在の調査で、防災拠点となっている全国の公的施設約19万棟のうち、88.3%が耐震基準を満たしていた。だが、自治体などの庁舎は74.8%にとどまる。

 同庁は「市町村は都道府県に比べ、耐震診断、耐震化実施のいずれも低い」とし、その原因を「予算の制約」と説明する。都道府県庁舎は85.3%だが、市町村は71.2%。都道府県間でも、静岡などの100%に対し、最下位の愛媛は30.4%と大差がある。格差解消のため同庁は耐震化事業での交付税の優遇(09年度)、国の補助対象となる防災・減災事業の拡大(15年度)など財政面での支援を実施してきたが、耐震率は不十分なままだ。

 名古屋大の福和伸夫・減災連携研究センター長は「役所や病院は災害時のとりで。いざという時に機能しなくなることはあってはならない。そうした問題に直面した阪神大震災以降、耐震化が進められてきたが、南海トラフ地震で被害が想定される地域に比べ、それ以外の地域の動きは鈍かった。財政的な問題もあったのだろうが、過去の教訓が十分に生かされたとは言えない」と指摘している。【高尾具成、吉川雄策、桐野耕一、熊谷豪】

 【ことば】耐震率

 建築基準法が定める基準を満たしている建物の割合。1981年の同法改正でできた新基準は震度5強程度でほぼ損傷しないことに加え、震度6強〜7で倒壊しないよう求めている。

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