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熊本地震 屋内恐れ車中泊…想定外の駐車場不足

1000人以上の住民が避難している市町村と熊本県内の避難者数の推移

 熊本地方を震源とする地震は、14日の「前震」に続く16日の「本震」で被害が広域に及び、熊本県災害対策本部の17日午前9時半現在のまとめでは、県内の避難者数は約18万人に膨らんだ。避難所では救援物資が追いつかないだけでなく、入りきれなかったり、さらなる地震を恐れて屋外の車で寝泊まりしたりする「車中泊避難」に駐車場の収容台数が追いつかないという課題が浮上している。

 損傷した同県益城(ましき)町役場から災害対策本部が移転した町保健福祉センターの避難所。町中心部に位置し、約600人が避難しているが、駐車スペースは約100台分しかない。

 子ども9人を含む親類5家族の計19人で、車5台を使って避難した町内の30代女性は最初、公園や畑で車中泊していたが、救援物資や情報が届かず、避難所である同センターに移動。ところが駐車スペースは見つからず、駐車場内の車が通行するためのスペースに車を止めている。「どかすように言われたらどうしよう」と不安だ。一方、軽乗用車に妻(59)と2人で寝泊まりしている町内の男性(65)は18日、透析のため町外の病院へ車で行かなければならない。「戻ってきたら駐車スペースがなくなっているのでは」と心配していた。

 町の指定避難所は約10カ所あるが、町広報担当者は「建物への避難しか考えていないので、駐車可能台数は把握していない」と話す。

 益城町西部にある県の「グランメッセ熊本」の駐車場(2200台収容)も16日夜、避難者の車や緊急車両で全て埋まっていた。

 指定避難所ではないが、町職員4人が避難者の対応に尽力する。ある職員は「避難所なら宿泊者名簿に名前や住所を書いてもらうが、車中泊避難は熊本市内の避難者もおり、出入りも激しい。人数の把握が難しい」と明かした。本震後に急増したため必要な救援物資量をうまく算出できず、用意した朝食用のパン500食分はすぐに底を突いた。夜には急きょ、仮設トイレ9基を設置した。

 同町に隣接する熊本市東区から避難してきた建設業の男性(61)は「自宅アパートは築5年で家具が倒れた程度だったが、余震が続くので怖い。近くの避難所は駐車スペースもないから、ここに来た」と窮屈な車内で膝をさすった。町は車の台数などから約1万人が身を寄せていると推定している。

 内閣府はもともと、自治体向けの「避難所運営ガイドライン」を今月中に公表する予定だったが、熊本地震が起きたため17日に急きょ、ホームページ上で公表。被災自治体には公表前に渡した。だが、あくまで指定避難所の建物内での住環境を想定した内容で、車中泊や避難所の駐車スペース確保については盛り込んでいない。内閣府の担当者は「駐車場の問題は、議論の余地があると思う」と話し、今回の地震で浮かんだ新たな課題として認識していた。【関谷俊介】

底突く備蓄食料

 自宅外への避難を選択する人が増え、一部の避難所で生活物資不足などが表面化してきた。避難の長期化が予想される中、早急な対策が求められている。

 熊本県によると、14日夜の地震後、益城町や熊本市を中心に2万3233人(15日午前2時現在)が避難したが、その後、7262人(同午後3時現在)に減少。しかし本震発生後、被害が阿蘇市や八代市など県内全域に広がって、避難者数は一気に増加した。

 これに伴い、市町村から水や食料の要望が急増し、16日中には県が備蓄していた水や食料は底を突いた。

 県の担当者は「2度目の予想外の揺れで『また揺れるのでは』と自宅から避難した人が増えたのだろう。民間企業に発注しているが流通の問題もあり行き届いていない。できる限りのことはしたい」と話す。

 益城町でも避難者が16日に増え、物資が足りなくなった。「避難当初はちゃんとした弁当だったが、16日は昼も夜も白いおにぎり二つずつ。ぜいたくを言うつもりはないが、足りているとは言えない」。自宅が全壊し、妻とともに町総合体育館に避難した男性(70)は不満げに語る。町担当者も「食料や衛生用品に加え、今後は下着類なども不足しそうだ」と心配する。

 避難所以外でも、物が行き渡らなくなってきている。熊本市では断水が続いており、市が設置した給水所に市民が長い列をつくっている。ガソリンスタンドには車列ができている。営業を再開した店舗は少なく、避難の長期化に伴い、衣料品や医薬品の不足を懸念する声も出ている。【平川昌範、尾垣和幸、吉川雄策】

欠かせぬ弱者配慮

 避難所では、高齢者や子ども、持病のある人ら、サポートが必要な人への配慮が欠かせない。

 災害時には、あらかじめ市町村が介護施設などと協定を結び、一般の避難所で共同生活を送ることが困難な高齢者や障害者、妊婦ら向けに福祉避難所が開設される。熊本市では16日から福祉避難所が開設され、17日午後5時現在、避難所で過ごしていた計13人が移った。市健康福祉政策課の担当者によると「ライフラインの寸断などで受け入れ施設側の態勢が整わないところが多い」と話す。

 東日本大震災後、宮城県気仙沼市の避難所で避難者の健康管理に当たった同市の村岡正朗(まさあき)医師は「福祉避難所へ移った方が良いケースでも、家族と離れることを嫌がる高齢者が多い。かかりつけ医ら顔なじみの人が説得に当たると良い」とアドバイスする。

 環境の変化は子どもたちに強い不安を与える。危機管理アドバイザーの国崎信江さんは「子どもたちは何が起きているかを理解できていない可能性がある。『大丈夫だよ』と声をかけて抱きしめてあげてほしい」と指摘する。

 避難所では、女性や子育て家庭など多様な視点を踏まえた運営も求められる。国崎さんは「おむつやミルク、生理用品などの支援や授乳スペースの確保などはためらわずに要望してほしい。避難所のグループごとに女性リーダーを作ると良い」と話す。

 避難所生活が長引くと、持病を持つ人たちへの影響も広がる。東日本大震災後に宮城県内の避難所の支援に入った孫大輔・東京大講師(内科医)は「薬がないことを自分から言い出せない人もいる。周囲が上手に聞き出すことが必要だ」と話す。また、歯磨きが十分にできないと、命にかかわりかねない誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしやすい。孫さんは「わずかな水でも口の中の衛生を心がけてほしい」という。【有田浩子、山田泰蔵、永山悦子】

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