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社説

車中泊で死者 一刻も早い対策が必要

 心配されていた事態が現実のものとなってしまった。

     車の中で避難生活を続けていた熊本市内の50代女性が、エコノミークラス症候群(肺塞栓(はいそくせん)症)で死亡した。さらに同症候群の疑いで、20人以上が熊本市内の病院に搬送され、重体の人もいる。極めて深刻だ。

     地震が続発している被災地には、自分の車で寝泊まりしている人が多数いる。熊本県益城町では、避難場所に指定されていない施設の大規模な駐車場で、数千人が車中泊している。亡くなった女性のように自宅敷地で車中泊する人を含めた実数は、自治体も把握できていない。

     車中泊が多いのは、避難所の収容能力が追いつかないためだ。さらにプライバシーのない避難所を避けたい意識もあるだろう。車中なら地震が起きても建物の下敷きになる恐れがなく安心だという人もいる。

     だが、同じ姿勢を取り続ける車中泊は、同症候群にかかる危険を伴う。水分を取るのが予防策だが、トイレの回数を減らすため、怠りがちになる。妊娠中や産後すぐの女性は特にリスクが高く注意が必要だ。

     車中泊にとどまらず、避難環境の悪化が心配だ。断水で、トイレなどの衛生が劣悪な避難所もある。熊本市内の避難所では、下痢症状を訴えた人からノロウイルスが検出された。集団感染の恐れもある。

     避難環境の改善が急務だ。その上で、高齢者や幼児を持つ母親らについては、いったん被災地を離れることも選択肢の一つだろう。

     都道府県域を超えた住民避難が広域避難だ。地震の心配がない地域に一定期間移る、緊急の広域避難も考えるべき時ではないか。

     過去の災害をみると、広域避難を実現させるのは簡単ではない。

     新潟県中越地震では、高齢者に長野県の温泉地などに避難してもらおうと行政が呼びかけたが、応じる人はいなかった。東日本大震災でも原子力災害に遭った福島の人たちに、関西の自治体が受け入れを表明したが、広域避難につながらなかった。

     仕事があって、離れられない人もいるだろう。言葉も異なる見知らぬ町で、家族と別れて暮らすのをためらう気持ちが強いのは理解できる。

     ただし、劣悪な環境で無理な避難を続ければ、高齢者や病弱な人が健康を害する恐れがある。命を守ることを最優先してほしい。

     福岡県や長崎県など九州の自治体から避難先を提供したいと手が挙がっている。同じ地区の人は同じ避難先にしたり、避難後も地元の情報をこまめに発信したりするなど、行政が安心材料を積極的に提供することが、被災者の背中を押すことになる。行政の調整力が問われる。

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