メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

避難の闇照らす命 本震直後に出産「奇跡の子」

橋田桜佳ちゃんを囲む(左から)野田スミコさんと橋田真紀さん、真紀さんの父野田能史(よしふみ)さん=熊本県宇城市松橋町松橋の「まつばせレディースクリニック」で2016年4月20日午後0時38分、平川昌範撮影

 21日で発生1週間を迎えた熊本地震。避難生活が長期化するにつれて体調を悪化させる人が相次いでいる。被災者は余震におびえ、不自由な生活でさまざまなストレスにさらされている。一方、大きな揺れの中で生まれた小さな命とともに、前を向く家族の姿がある。

 マグニチュード7.3の地震が起きた16日、震度6強の揺れに見舞われた熊本県宇城(うき)市の産婦人科医院で産声が上がった。同市小川町の橋田真紀さん(28)の長女桜佳(おうか)ちゃん。家族は「あなたは奇跡の子。たくましく育って」と目を細める。

 真紀さんは、出産のために近くの実家に戻り、16日午後に帝王切開を予定していた。寝付けずに横になって過ごしていた16日午前1時25分ごろ、突然の大きな揺れに襲われ、思わず両手でおなかをかばった。食器や衣装ケースが床に落ち、靴箱は倒れ、家を囲む石塀もほとんどが倒れた。

 慌てて家を飛び出すと、母広美さん(56)ら家族4人で近くの公民館に避難した。

 祖母の野田スミコさん(92)におなかをさすってもらっていると陣痛が始まり、破水。母が呼んだ救急車で市内の産婦人科医院に運ばれた。途中の道路は地震で壊れており、回り道をしてたどり着いた。

 医院も外壁のタイルが落ちるなど損壊する中、同日午前5時過ぎに無事出産。桜の季節にちなんだ名前はもともと決めていた。

 スミコさんは、3608グラムで生まれた元気なひ孫を抱き「こんな地震の中で命を授かったことに感謝です。『あなたは奇跡の子なのよ』と教えてあげたい」。

 真紀さんは「初めての出産で子供のことで頭がいっぱいだった。こんな時に生まれたんだから、きっと丈夫な子になる」とほほ笑んだ。【平川昌範】

続く不便 「揺れで目覚め」

 20日夕、益城(ましき)町保健福祉センターには、ご飯と豚汁などの食事を待つ人たちが列を作った。14日夜に避難してきた武内奈々さん(26)は、息子(4)と娘(1)と軽自動車内で寝泊まりする。エコノミークラス症候群の恐れがある上、夜に子どもが泣くと「隣の車の人に迷惑がかからないか」と気苦労も多い。

 19日夕に震度5強の地震に襲われた八代市の八代中・高には約600人が避難。20日早朝には布団や毛布を抱え、車で出社する人たちの姿もあった。会社員の諸林龍太さん(21)は「ドンと、揺れると目が覚める。スーパーは開いていても、食糧は少ない」と言う。

 宇土市では、16日未明の地震で4階部分がつぶれた市役所本庁舎の周辺に立ち入り禁止のロープが20日も張られたまま。市は災害対策本部や市民の相談窓口になる「必要最小限」の部署を、南東に約600メートル離れた市民体育館に移し、19日から業務を再開した。

 約74万人が暮らす政令市の熊本市でも5万人以上が避難生活を続けている。住民生活に欠かせないスーパーなども被災し、中央区の「イオン熊本中央店」では、店舗の駐車場で生活必需品など一部の商品を販売していた。

 中心市街地の被害も深刻だ。地震前、市内で最もにぎわうエリアの一つだった中央区の商店街「上通」は、多くの店が閉じたままで通行人もまばら。建物の外壁や割れたガラスが路上に散らばり、「頭上注意」「倒壊危険」の張り紙が目立つ。

 「舒文堂(じょぶんどう)河島書店」はこの日、営業を再開。店内の3メートルを超える棚には約10万冊の古書などが並び、余震に備えてヘルメットが置かれていた。同店の河島康之さん(36)は「店を開けなければにぎわいは戻らない。これ以上の余震がないことを祈るしかない」と語った。

 20日夜、西区上熊本の大型銭湯「城の湯」には住民らがお風呂に入るため長い列を作った。従業員によると、最大2時間半待ちといい、中央区の女性(60)は「14日の地震の後からお風呂に入っていない」と疲れた様子だった。【原田悠自、石井尚、津島史人】

関連記事

毎日新聞のアカウント

話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 女性遺体 集合住宅の空き家で発見 神戸
  2. 大相撲夏場所 目標の賜杯に届かず 高安3敗目
  3. サッカーU20W杯 日本、堂安のゴールで1点返す
  4. 宮里藍引退へ 「年下なのに早い」一夜明けても惜しむ声
  5. サッカーU20W杯 日本、イタリアとドロー 決勝T進出

編集部のオススメ記事

のマークについて

毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

[PR]