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SUNDAY LIBRARY

著者インタビュー 太田肇 『個人を幸福にしない日本の組織』

これからは複数の組織に属する〈分属〉の時代になっていく

◆『個人を幸福にしない日本の組織』太田肇・著(新潮新書/税抜き740円)

 日本の組織について言われてきた「チームワークがよい」「愛社精神が強い」「分厚いミドル層」といった〈常識〉は間違っている。−『個人を幸福にしない日本の組織』は、こんな刺激的な見解からはじまっている。

 企業、大学、自治体、PTA、町内会など、日本にはさまざまな組織があるが、それらは属する個人を守るどころか、むしろ抑圧し不幸にしていると、著者の太田肇さんは指摘する。

「かつての農業社会、工業社会では、同じことを大人数でやることで成功してきました。組織は、個人よりもチームワークを重視する運命共同体的な集まりでした。高度成長期はそれでよかったのですが、いまのようなポスト工業社会ではそのモデルは通用しなくなった。能力やモチベーションに応じて多様な働き方を用意すべきなのに、いまだに〈絆〉とか〈つながり〉が叫ばれていて、若い世代もそれにとらわれる傾向があります。だから、組織に属するだけで、ストレスで引きこもりや自殺に追い込まれてしまう」

 硬直した組織を変えるために、本書は「エースこそ管理職から外せ」「大学入試に抽選を取り入れよ」「PTAや町内会は自由参加でよい」などの大胆な提言を行う。

「入試は『大学で教育を受ける権利を与える』人を選ぶためのものです。本来入り口でしかないものが、目指すべきゴールになってしまっている。そのために数点多く取ることを目的に受験勉強するのは、いわば価値のない競争です。であれば、その数点分は抽選で決めればいいんです。そうすることで、学ぶ権利を公平に与えることができます。PTAや町内会についても、生活スタイルが多様化した現代では、意欲に応じた関わり方を用意すべきです」

 また、「地方分権」が叫ばれる一方で、都市と地方、地方自治体間での格差は広がっていると、太田さんは言う。

「公平性の原則がないがしろにされ、医療や教育が十分に得られない人が出てくる。地方分権は強者の論理なんです。こういう問題こそ、国の役割が重要になります」

 自らも大学という組織に属する太田さんは、なぜこのような考えを持つにいたったのだろうか?

「組織研究というのはまず組織を認めるのが前提になるのですが、私は組織が嫌いだったんです(笑)。そこで、そういう人でも居場所が持てる組織ができないかと考えました。これまでの組織は人々を囲い込んで管理してきましたが、これからの組織は人々に場を提供し、活動を支援するものになるべきです。そこでは、一人一人が個性や能力を発揮しながら、組織への帰属のしかたを選べる〈分属〉が主流になっていくでしょう」

 本書を、組織の中で疲れている人に読んでほしいと太田さんは思っている。

「組織は変えようとすれば変えられます。また、完璧に頑張ろうとせず、非生産的な仕事を抱えないことです。さらに、組織の〈外〉にも、活躍できるチャンスはあるんだと気づいてほしいですね」

(構成・南陀楼綾繁)

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太田肇(おおた・はじめ)

 1954年、兵庫県生まれ。同志社大学政策学部教授。専門は個人を尊重する組織の研究。著書に『個人尊重の組織論』『承認欲求』『公務員革命』『がんばると迷惑な人』など

<サンデー毎日 2016年5月8・15日合併号より>

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