メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

熊本地震

ネットで広がる支援ツール 垣間見えた課題も

熊本地震ではネット上にさまざまな地震に関する情報や安否確認の仕組みが登場。被災者支援に役立った一方、課題も見つかった。(写真は渡辺英徳・首都大学東京准教授が制作した「台風リアルタイム・ウォッチャー」に寄せられた熊本地震の被害の様子)

 熊本県を中心とする一連の地震では、グーグルやフェイスブック、LINEなどネット関連企業が相次いで安否確認の「支援策」を打ち出した。ボランティアらがネット上の地図を使って情報を分かりやすくまとめる試みも広がっている。東日本大震災の経験やネット上のサービスの充実などを通じて工夫を重ね、速やかな安否確認につなげたり、細やかな情報を提供したりするなど「進化」したとも言えるネット支援だが、一方で課題も見つかっている。大災害が相次ぐ日本。今後にも備えて試行錯誤を重ねる必要がありそうだ。【岡礼子、錦織祐一/デジタル報道センター】

グーグル 大震災後に通信各社と連携し改良

 グーグルは熊本地震発生直後、安否確認サービス「パーソンファインダー」(https://www.google.org/personfinder/japan)を開設した。「人を探す」「安否情報を提供する」の二つの機能があり、安否を確認したい人の名前か名前の一部、携帯電話番号を入力して探すことができるほか、自分や知人の名前を入力した上で、災害発生後に連絡が取れたかどうか、最後に見た場所、メッセージなどを登録できる。

グーグル「パーソンファインダー」の画面

 米国でハリケーン「カトリーナ」が発生した2005年に開発され、日本では東日本大震災で初めて使われた。大震災でも発生当日に開設。ボランティアによる避難所名簿の書き起こし、自治体や警察、報道機関などからの情報提供を含め計67万件の安否情報が登録された。

 発生から5年がたった今年3月に同社が被災者を招いて開催した震災を振り返るイベントでも「あの時使った」との声が寄せられ、同社は「情報を扱う会社として災害時にできることをしたいという思いで提供している。少しでも役に立てればうれしい」とする。

 12年以降、安否情報を確認しやすくするため、携帯電話会社と連携して、各社の災害用伝言板からパーソンファインダーへのリンクを張ったほか、NTTドコモの災害用伝言板、NTTレゾナントの安否情報ページ「J−anpi」の登録情報と相互に検索できるよう改良。熊本地震では25日現在約1000人の安否情報が登録されている。

フェイスブック パリ同時テロで導入した仕組みを国内初提供

 今回の熊本地震では、フェイスブックも14日の地震発生直後に「災害時情報センター」(https://www.facebook.com/safetycheck/kumamoto-prefecture-earthquake-apr14-2016/)を日本の災害では初めて開設。九州の利用者に安否を確認する通知が届き、そのボタンを押すだけで他のフェイスブック友達に安否情報が発信できる仕組みだ。

 同社は「フェイスブックは実名制のサービスで、人とのつながりがベース。その特性を生かして災害時に役立つ機能を提供したかった。災害時は情報の混乱が起きやすく、個別に連絡を取ることも難しい状況が想定されるため、とにかく簡単、シンプルに安否確認ができることが重要と考えた」と説明する。

 同社は、今回の熊本地震での利用者数はまだ明らかにしていないが、同様に災害時情報センターを開設した昨年11月のパリ同時多発テロでは、24時間以内に約410万人がこの機能を使って「無事」を報告した。

 熊本県南阿蘇村で農園「O2(オーツー)ファーム」を経営する大津愛梨さん(41)は、地震発生直後にフェイスブックに安否情報を発信。「とても役立った。ただ、フェイスブックの場合は、誰かが『こんな物資が必要です』と投稿するとそこに集中してしまうという事態が生じたので、誰かが『送ります』と書いたらリストから消えていくようなサービスがあったらいいと思った」と話す。

LINE 「無料通話サービス」に波紋も

 東日本大震災で身近な人との連絡がつかなかったことをきっかけに、11年6月にサービスを開始したLINEは、国内の災害向けには初めて、LINEアプリから固定、携帯電話への通話を最大10分間無料にすると公式ツイッターで表明した。熊本地震発生から約2時間後のことだった。

 LINEはもともと、インターネット回線を使ったアプリ同士の通話が可能で、この場合は通常も通話料はかからない。今回無料にしたのは、アプリから発信して電話回線につながる通話だった。同社は「海外の災害時に無料扱いにしたことがあり、すぐに対応可能だった」と説明するが、直後から通信の専門家を中心に「かえって回線の混雑をあおる」とネット上で批判が湧き起こった。

 国立情報学研究所の佐藤一郎教授はLINEの施策に対し、「災害支援としては逆効果だ」と指摘する。佐藤教授は▽災害時に通信を増やすと、救急などの重要な連絡が滞る危険がある▽発生直後は通信各社の被害状況が分からなかったが、もし被害が大きかった場合、さらにつながりにくくなる−−点を挙げ、「善意の策だったと思うし、(14日の「前震」)発生直後は幸い被害が局地的で大きな通信障害は起きていなかったが、『無料』をうたうことで余計な使用を招きかねない。せめて被害状況を確認してからにすべきだった」と話す。

 LINEは、「積極的に電話してほしいという意図はなく、他の通信手段ではつながらない時の最後の手段になると考えて始めたが、携帯、固定電話の通話が混雑するリスクを高めることは事実。考慮が十分ではなく、説明も足りなかった」との見解を明らかにした。

 佐藤教授は「災害時は、スマートフォンからのインターネットも含め、できる限り通信回線を使わないことが望ましい。NTTの伝言板に登録するとか、被災地外にいる知人などに無事を伝えて、広めてもらうのが良い。通信インフラは有限のもので『誰かが使えば誰かが使えなくなる』という意識を持ってほしい」と訴える。

ウェブ地図 ボランティアが積極的に発信

グーグル「災害情報マップ」の画面

 避難所や給水場所などの位置をネット上の地図に表示(マッピング)して公開するケースも大震災時に比べて目立つ。カーナビ情報を使ったトヨタやホンダの被災地の道路通行実績情報のほか、支援物資集積地点や給水場所の情報をボランティアらがまとめたものなどがある。大震災後に知られるようになったマッピングだが、グーグルの地図機能を使えば作成が容易で今回の熊本地震で増えたとみられる。

 大学生有志を中心としたボランティアグループ「Youth action for Kumamoto」は自治体ホームページなどから、炊き出しや給水の場所など、被災地で役立ちそうな情報を探し、地図上に表示する作業を約90人で分担している。

 フェイスブックページ(https://www.facebook.com/groups/1314441215239619/)で新しい情報も募っており、発生直後は常に誰かが更新していたが、現在は情報の種類ごとに1日1、2回情報が古くなっていないか確認し、更新しているという。情報を表示した地図はグーグルの「災害情報マップ」(https://www.google.org/crisismap/japan)に採用され、ホンダの道路通行実績、雨雲レーダーなどの情報と重ねて見ることもできる。

 代表の塚田耀太さん(22)=慶応大3年=によると、自治体、報道機関の情報、現地にいるメンバーが直接知らせてくれる1次情報を重視し、ツイッターの投稿は複数の人が投稿しているか、写真が付いているかなどを調べた上で追加するかどうか判断しているという。また、ウェブサイト(http://20160414kumamoto.wix.com/community)で、検索をせずに最新の情報にアクセスできるよう各地図の二次元コードを公開し、コンビニエンスストアのネットプリントを使ってコードを印刷できるようにした。

 塚田さんは「地図自体を印刷すると情報が古くなってしまうので、スマホなどを使える人が周囲に伝えてほしい」と呼び掛けている。被災地から「(コードを)印刷して貼っている」「ボランティアで避難所を回るときに、分かりやすくて助かる」といった声が寄せられているという。

ウェブ地図 専門家が指摘するこれからの課題

 東日本大震災の被災状況をまとめた「東日本大震災アーカイブ」や、各地の被害など台風情報をまとめた「台風リアルタイムウォッチャー」を制作した渡辺英徳・首都大東京准教授(メディアアート)は「支援者や自治体などにとって俯瞰(ふかん)的な視点が得られる」とボランティアによる情報集約を歓迎する。

 一方で▽マッピングされた地図を見つけて情報を得るにはスマートフォンなどを使いこなす一定のスキルが必要▽ある日の情報を網羅しても翌日には役に立たない可能性があるが、ボランティアの場合、集約した情報に対してどこまで責任を負えるか難しい▽実際に活用されたのか分からないことが多く、利用者の声を反映して改善しにくい−−といった課題を挙げている。

 情報発信者が(1)正誤や変更の連絡を受け、速やかに修正できる態勢を取る(2)情報に対するレビューを載せられるようにする(3)被災地の人が使う場合、現在地の周辺情報の必要性が高いため、ウェブ地図を開いた時に、まず現在地の周辺が表示されるような仕組みづくり(4)電源が乏しい場合や、スマホを使い慣れていない人たちのために、印刷できるデータ形式でも提供する−−など、被災地で役立つ提供法を勧めている。

関連記事

毎日新聞のアカウント

話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. のんさん 殺害予告容疑 北海道の47歳男逮捕
  2. セクハラ疑惑 財務次官辞任 「今こそ連携する時」メディアの枠超え女性結束
  3. 新潟 米山知事、援助交際「3、4年前から断続的に」
  4. 霧島連山・硫黄山 250年ぶりに噴火 宮崎・鹿児島県境
  5. 霧島連山 硫黄山噴火…250年ぶり 警戒レベル3に

編集部のオススメ記事

のマークについて

毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

[PR]