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土砂崩れ想定外 国の基準満たさず指定見送る

斜面が崩落し5人が亡くなった高野台団地の現場=熊本県南阿蘇村河陽で2016年4月29日午後0時17分、本社ヘリから須賀川理撮影

南阿蘇 7人犠牲の現場2カ所

 熊本地震の被災地となった熊本県南阿蘇村で、7人が犠牲になった2カ所の土砂崩れ現場が、土砂災害防止法で事前に危険性の周知などを義務づけている「警戒区域」に指定されていなかったことが熊本県への取材で分かった。斜面が緩やかであるなど、国の定める基準を満たしていなかったためで、県だけでなく国も「想定外」としている。しかし、火山灰が堆積(たいせき)した阿蘇地方は土砂災害が起こりやすく、過去には別の未指定の場所でも被害が相次いでいる。専門家は地質なども考慮した新たな対策の必要性を指摘している。【志村一也、前谷宏】

 国土交通省などによると、熊本地震では阿蘇地方を中心に少なくとも97カ所で土砂崩れが確認され、南阿蘇村では3カ所で計9人が犠牲となった。このうち、60代の夫婦が巻き込まれた同村立野(たての)の現場は警戒区域に指定されていたが、5人が死亡した同村河陽(かわよう)の高野台団地と、宿泊中の香川県の夫婦が犠牲になった同村長野の火の鳥温泉は指定外だった。

 土砂災害防止法上、傾斜度が30度以上で高さ5メートル以上の急傾斜地▽急な渓流の下の扇状地▽地滑りが発生しているか、その恐れがある地域−−で周辺に住宅などがある危険箇所を都道府県が警戒区域に指定。

 市町村はこれを踏まえて防災計画で避難警戒態勢を整え、ハザードマップなどで周辺住民に危険を周知するよう義務づけられている。

 しかし、熊本県によると、高野台団地と火の鳥温泉周辺の斜面は傾斜が30度未満で、過去に地滑りが起きた形跡がなく、土石流を起こしやすい地形でもないことから、警戒区域の指定を見送っていた。

 県の担当者は「警戒区域は国の基準に従って指定しており、想定外の災害。平たんな地形でも崩れることがあるが、基準に合致しない地形まですべてを調べるのは難しい」と話す。

 国交省の担当者も「基準は過去の災害を調査して積み上げた知見。おかしなところはない。被害現場を指定すべきだったのかどうかは調査してみないと分からない」と話す。

 ただ、東日本大震災(2011年)では今回同様基準を満たさない地点での土砂災害が、福島県だけで少なくとも27件起き、15人が犠牲になった。岩手県でも4カ所で確認された。

 南阿蘇村周辺は12年の九州北部豪雨でも土砂災害が相次いだ。16日の本震後に高野台団地周辺を調査した東京農工大の石川芳治教授(砂防工学)は「勾配が緩やかだが、水を多く含む火山灰でできた土壌で、崩れやすく地震による土砂災害のリスクが高い。現在の基準は豪雨による災害のデータを中心に作られており、地震で崩れやすい斜面が外れる恐れがある。要件を満たしていなくても地震に弱い斜面がないか、調査で割り出す努力をすべきだ」と話した。

土砂災害防止法

 土砂災害が発生する恐れのある地域を明らかにし、被害を予防することが目的。32人の死者・行方不明者が出た1999年の広島県の豪雨による土砂災害を契機に2001年に施行した。国の定める基準を基に、都道府県が地形図から危険箇所を抽出して現地を調査し、警戒区域を指定する。著しい被害が生じる恐れのある場合は特別警戒区域とし、開発行為の規制や移転の勧告などもできる。2月末時点で全国約42万カ所が警戒区域に指定されている。

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