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震災関連死の難病女性、福祉避難所の存在知らず

車中泊で亡くなった母恵子さんの遺影の前に座る長男の光彦さん=熊本県氷川町で2016年4月29日、今手麻衣撮影(一部画像を処理しています)

 熊本地震後に急性心不全で死亡し、熊本県が震災関連死とみられると発表した同県氷川町の稲葉恵子さん(73)は、歩行が困難で転びやすい進行性核上性麻痺(まひ)という難病を患いながら車中泊を続けていた。家族は難病や障害のある被災者向けの避難所の存在を知らず、要支援者への周知のあり方が災害時の課題として改めて浮上した。

     夫(76)と2人暮らしをしていた稲葉さんは、4月16日夜から隣接する宇城市の宇城総合病院の駐車場などで、同病院近くに住む長男光彦さん(49)が用意したワゴン車に寝泊まりしていた。2人を心配した光彦さん夫婦も別の車で車中泊を続け見守っていたが、20日未明、夫がぐったりしている稲葉さんに気付き、すぐに同病院に運んだものの死亡。県が29日、震災関連死とみられると発表した。

     車中泊をしていた間も、光彦さんは日中、外に連れ出したり、こまめに体調をチェックしたりして、懸命に稲葉さんをケアしていた。しかし、稲葉さんは夜になると少しの余震で跳び起きたり、夫にしがみついたりし、かなりストレスがたまっている様子だった。

     阪神大震災後、全国の自治体では高齢者や障害者らを対象にした福祉避難所の指定が進んでいる。人口規模の小さな氷川町は今回、指定をしていないが、26日までは町内5カ所の避難所のうち3カ所について、高齢者や障害者を優先し、ニーズに応えるようにしていた。しかし、光彦さんら家族もその存在を知らず、難病のため避難所での寝起きは難しいと判断して車中泊を続けていたという。

     介護福祉士などの資格を持ち、福祉施設で働いていた光彦さんは「母の世話をしたい」という思いから、4月1日、稲葉さんの自宅の一部にデイサービスを開設し、稲葉さんら地域の高齢者を受け入れ始めたところだった。「社交的で、おしゃれで、花が大好きな母だった。これからたくさん親孝行しようと思っていた矢先だったのに」と肩を落とす。

     光彦さんは「車中泊は本当に危険。気が付かないうちにストレスや疲れがたまる。福祉の仕事をしている私でも、高齢者や障害者向けの避難所の存在を知らなかった。今も車中泊をしている人は気を付けてほしい」と語った。

     熊本県によると、震災関連死とみられる被災者は稲葉さんを含め18人に上る。【今手麻衣】

    個別の支援計画を

     立木茂雄・同志社大教授(福祉防災)の話 熊本地震の被災地を歩いたが、福祉避難所などの情報が必要とする人に届いていない実態があった。今回のケースでは、居住地外に避難した結果、住所地の自治体が把握できなかった可能性もある。同様の悲劇を防ぐには、自治体が当事者と一緒に個別の避難支援計画を作り、いざという時どこに避難するか決めておくことが大切だ。

     【ことば】福祉避難所

     高齢者や障害者、妊産婦、乳幼児ら特別な配慮が必要な被災者向けに災害時に開設される避難所。自治体は災害救助法に基づき、バリアフリーなどに主眼を置き、福祉施設や公共施設などを指定する。国の指針によると、紙おむつや医薬品、車椅子などを備蓄し、要支援者10人に1人「生活相談職員」を置くことが望ましいとされる。

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