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被爆地の声聞いて「核被害、怖さ伝える」

被爆体験を語る梶本淑子さん=広島市中区で2016年4月9日、川平愛撮影

 広島、長崎の人々の頭上に人類で初めて原爆を落とし、今も世界最大規模の核兵器を保有する米国のトップが、原爆投下から71年を経て初めて被爆地を訪れる。広島の被爆者や関係者は、オバマ大統領の広島訪問決定にさまざまな思いを交錯させ、自分たちの声に耳を傾けてほしいと期待を寄せた。【山田尚弘、竹下理子】

 元中学教諭で広島県原爆被爆教職員の会会長の江種祐司さん(88)=府中町=は「原爆によってどんな被害が出たか、オバマ氏自身が事実を知ろうという気持ちがあるのなら、喜ばしい」と歓迎した。一方で、「被爆直後は無傷だった人間でも、耳や鼻から血を流し、体に紫色の斑点が浮かんで亡くなっていく例が多かった。そういう被害こそが核被害の本当の恐ろしさで、被爆者から話を聞かなければ分からない」と語った。

 14歳の時、爆心地の北約2.3キロで被爆し、4月の主要7カ国(G7)外相会合で報道関係者向けに証言した梶本淑子さん(85)=広島市西区=は「原爆投下から70年以上たち、あまりにも遅すぎる」と批判する一方で「被爆者の証言を少しでもいいから聞いてほしい。いかに原爆がむごいものかが伝わるはず」と願った。

 米国での証言経験がある被爆者の山本定男さん(84)=広島市東区=は「きっと、自身が考えていた以上に原爆の被害は甚大だったと、核に対する考え方が変わるはず。そして言葉だけでなく、政治家として何かをしなければいけないと思うはずだ」と期待した。

 厳しい見方もある。原爆ドームの絵を長年描き続けてきた被爆者の原広司さん(84)=広島市安芸区=は「ノーベル賞をもらったのに複数回の核実験を実施し、矛盾した行動を取っている。核兵器で多くの人の命を奪ったのは事実で、憎しみがないと言えばうそになる」と憤りを隠さない。

 広島県原爆被害者団体協議会理事長の坪井直(すなお)さん(91)は「原爆投下で一生を棒に振った。腹の底では、思うこともある。しかし、こちらから謝罪を求めはしない。オバマ大統領が広島に来るのは歓迎。人類の過ちをよく知ってほしい」と話した。

 もう一つの広島県被団協理事長の佐久間邦彦さん(71)は「被爆者がどんな思いで生きてきたかを聞き、原爆の後遺症や裁判など、今も問題が続いていることを知ってほしい。それを踏まえてヒロシマから核廃絶を訴えてくれたら、意義があると思う」と語った。

特別なインパクト

 湯崎英彦・広島県知事も10日夜、コメントを出し、「大変喜ばしく思う」と歓迎の意を表明。「核兵器国の現職の首脳として初めてで、特別なインパクトがある。

 停滞している核兵器廃絶の動きを再起動させる、世界中に希望を与える力強いメッセージを発信していただきたい」と期待を込めた。

「平和の心」共有して

 オバマ米大統領の広島訪問決定を受け、松井一実・広島市長は10日夜、コメントを発表し、「心から歓迎する。平和記念公園で被爆の実相に触れ、被爆者の体験や平和を願う『ヒロシマの心』を共有してほしい」と訴えた。

 さらに、核兵器廃絶に向けて、「世界の指導者が共に歩みを進める具体的な道筋を示してほしい。国際的な動きを前進させる歴史的な出発点となることを期待する」とした。

歴史的な一歩

 田上富久・長崎市長は「困難な問題を乗り越えて、大統領が英断されたことに心から敬意を表する。大統領が直接、被爆の実相に触れることの意義は非常に大きく、歴史的な一歩である。被爆地から、大統領自身の言葉で『核兵器のない世界』の実現に向けた力強いメッセージを発信されることを期待する」とのコメントを発表した。

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