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肝炎、肝硬変引き起こす 暴飲暴食は脂肪肝への一本道

當瀬規嗣・札幌医科大学教授

 肝臓には、消化吸収された糖質や脂肪を蓄積し、必要に応じて全身へ送り出す役割があります。また、必要に応じてアミノ酸からたんぱく質を合成したり、アミノ酸や脂肪から糖質を作り出したりします。というわけで、肝臓は栄養素の「問屋」であり「工場」であるといえるのです。

 私たちは一日に3度食事をします。そうして腸に達した食べ物から糖質、脂質、たんぱく質とアミノ酸が吸収されます。吸収に要する時間は1食につき4〜5時間と見積もられます。その間、吸収された栄養素は次々と肝臓に運び込まれます。貯蔵、加工、配送と、肝臓は大車輪の活躍となります。

 栄養素の吸収が終了しても、肝臓はお役御免とはなりません。今度は空腹で栄養素の吸収がなくなるので、全身のあらゆるところで栄養素不足が起こる恐れがあります。そこで、肝臓は貯蔵していた栄養素を全身に分配し、不足があれば、栄養素を合成して全身に送り出します。空腹のときも肝臓は忙しいのです。こうして肝臓は私たちが眠っているときにも忙しく働いているのです。

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札幌医科大学教授

とうせ・のりつぐ 1984年北海道大医学部卒、88年北海道大学大学院修了、医学博士。北海道大医学部助手、札幌医科大医学部助教授、米シンシナティ大助教授を経て、98年札幌医科大医学部教授(細胞生理学講座)に就任。2006~10年、同医学部長。医学部長就任時は47歳。全国に医学部は国公私立合わせて80あるが、最年少の学部長。「40代は驚きで、加速し始めた医学部改革の象徴」と話題になった。専門は生理学・薬理学で、心拍動開始の起源を探求している。