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社説 臨床研究法案 不正抑止につなげたい

 降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑では、データの不正が発覚し、製薬企業と研究者との間の不透明な資金関係が大きな問題となった。

     これを教訓に、政府が検討してきた対策が、臨床研究法案としてまとまり、国会に提出された。

     製薬企業などが、自社製品を利用して臨床試験を実施する研究に資金提供する場合、契約を結び、インターネットなどで公表を義務づけることが大きな柱だ。研究者や研究施設に提供する研究費や奨学寄付金、講演料や原稿料が公表対象となる。

     成立すれば、不正の抑止が期待できる。日本の臨床医学研究の信頼回復を進めなければならない。

     バルサルタンの臨床試験は、降圧剤としての販売承認後に、他の降圧剤よりも脳卒中の予防効果などが大きいかどうかを国内の5大学が検証した。5大学には、販売元のノバルティスファーマから計11億円超が奨学寄付金として提供されていた。

     臨床試験のうち、新薬の製造・販売承認を受けるための「治験」は、医薬品医療機器法(旧薬事法)で規制されている。だが、バルサルタンのように、承認された病気以外への薬の効果を検証するような臨床試験は規制の網がかからず、製薬企業の不透明な関与やデータ操作などの不正を生んだ一因と指摘されていた。

     法案では、製薬企業などから資金提供を受けた薬の臨床試験や未承認薬を使った臨床試験を「特定臨床研究」と規定し、治験に準じた規制を導入することにした。

     研究責任者は、実施計画書を作成し、国が認定する臨床研究審査委員会の審査を受けなければならない。長期間のデータ保存や、カルテと実際の試験データが一致するかどうかの確認も義務づけられる。

     臨床試験の透明性は増すだろう。ただ、製薬企業などから研究者側への労務提供の規制は、法案には書かれなかった。再検討の余地がある。

     臨床研究審査委員会のあり方も課題の一つだ。審査委のチェック機能がうまく働かなければ、法案の実効性も担保できないからだ。

     厚労省は省令で審査委の構成要件を定め、法律家や患者団体代表などの参加も求める予定だ。地域や対象分野に応じて審査委を集約し、チェック機能を高めるべきだ。また、審査委を支える事務局のスタッフを充実させることも極めて重要だ。

     法案には最高で懲役3年、罰金300万円の罰則規定もある。しかし、薬の売上高に比べると、罰金はかなり少額だ。製薬企業などへの制裁や不正防止効果を更に高めるため、米国のような高額の制裁金制度の導入も検討すべきではないか。

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