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ぷらすアルファ

情報共有が命守る一歩に 子どもの事故死、年間300人

「新米パパママのための応急手当講習会」で人形を使いながら、赤ちゃんが異物を誤飲した際の除去方法について学ぶ両親たち=東京都立川市で

ぷらすアルファ(α)

 毎年300人以上の子どもが事故で命を落としている。しかし、事故情報は消費者庁、厚生労働省、消防庁、警察庁などがそれぞれ別に収集、保有する縦割りの弊害で、ほとんど共有はされてこなかった。今月7日には、関係省庁が情報を共有し、横断的に取り組む連絡会議が発足。子どもの事故防止に向けた新たな仕組み作りが始まった。

     ●省庁連携連絡会議

     「お子さんの死亡原因のトップに事故というのがある。防げるものは防がないといかんと思っている」。河野太郎・消費者担当相は7日の記者会見で連絡会議を開く意義をこう語った。

     2014年に事故で亡くなった14歳以下の子どもは、全国で371人(人口動態統計より)。内訳は▽交通事故115人▽窒息114人▽水死80人▽転倒・転落25人−−などとなっている。連絡会議は、交通事故を除いて、商品やサービスに関わる事故を取り扱う。消費者庁、警察庁、総務省消防庁、厚労省、文部科学省、経済産業省、国土交通省、農林水産省、内閣府の9府省庁が参加した。

     事故情報の取り扱いの現状は、発生場所によって担当省庁が分かれる。例えば同じ遊具による事故でも、保育園で起きた事故は厚労省、幼稚園や小学校は文科省、国営公園なら国交省といった具合だ。消費者庁は今後、各省庁が持つ事故情報を集約、整理し、分析や共有を進める。分析結果は公表し、啓発活動の実施や安全な商品の普及に役立てる方針だ。

     ●いつ、どんな状況で

     「発表されるのは亡くなった子どもの数だけ。入院や通院が必要になった事故、医療機関を受診するほどではなかった事故の件数に比べれば、ごくごく一部だ」。そう指摘するのは、子どもの傷害予防の啓発活動を続けるNPO法人「セーフキッズジャパン」の山中龍宏理事長だ。事故を減らすためには「情報」が最も必要だという。「何歳の子がいつどこで、どんな状況でどの程度のけがをしたのか。データを集め分析して初めて対策が取れる」と訴える。

     データ収集には医療機関の協力が欠かせないが、個人情報やプライバシーへの配慮も求められる。医療従事者には治療に専念してもらうため、子どものけがの情報を聞き取る専門家の確保も必要だ。

     また、事故といっても種類はさまざま。山中理事長はまず取り組むべき課題として「全部一度には無理なら、死亡につながりやすい転落事故から対策を取ってはどうか」と提案する。転落事故の事例を各省庁から集め、子どもの身長と柵や窓の高さとの関連などを分析する。その結果を反映させ、消費者に対しては注意を呼びかけ、メーカーに対してはベランダの構造や窓の開閉幅などの改善を促す。「転落事故が減ったという一つの成功事例ができれば、他の事故にも応用できる。重大事故の予防につながる具体的な取り組みをしてほしい」と、連絡会議の今後に期待する。

     ●目線を変えて

     事故情報を生かして商品を開発する動きは既にある。

     子どもたちの安全、安心に貢献する商品・サービス開発を支援するNPO法人「キッズデザイン協議会」では経産省、国立成育医療研究センターと連携し、事故によるけがで受診した子どものトリアージ(重傷度の判断)情報を基にデータベースを作成。会員企業の商品開発に生かしている。

     「例えば、IH炊飯器の蒸気でやけどした子どもがいた。炊飯器を床に置いて使う家庭があり、その形状から子どもが椅子と勘違いして座ったことによる事故だったということが分かった。これが『蒸気レス』の炊飯器や蒸気を低温化する炊飯器の開発につながった」と、福田求道専務理事は説明する。ほかにも、一定の加重で先端が曲がり、口の中を傷つけない歯ブラシなど、安全かつデザイン性の高い商品が数多く開発されている。「業種の垣根を越え、子ども目線でのものづくりを働きかけたい」と福田専務理事は話す。

     事故防止に熱心に取り組む自治体やNPOは増えつつある。東京消防庁は、東京都内3カ所の防災館で毎月1回、「新米パパママのための応急手当講習会」を開き、乳幼児の事故防止対策や誤飲などへの対処法を教えている。

     立川防災館(東京都立川市)の講習会に10カ月の長男を連れて参加した女性会社員(34)は「段ボール箱に付いていたガムテープの切れ端を口の中に入れていたり、高さ30センチくらいの箱によじ登っていたりと、動きが活発になってきた9カ月くらいから目が離せなくなった。家の中の身近な危険が分かり、すごく勉強になった」と話した。

     だが、保護者各自の努力に頼るだけでは事故防止にも限界がある。「消費者に注意喚起するだけでは絶対に事故は減らない」と、小児科医でもある前出の山中理事長は断言する。事故防止の先進的な取り組みが他の地域に広まっていないというのが現状だ。消費者庁も「優良事例の横への展開」を課題に挙げている。【銅山智子】


     <子どもの救急事故の事例>

    (東京都内、東京消防庁調べ)

    転倒・落下

    ・窓 窓側に置かれていたソファの横の網戸を突き破って転落(4歳男子、重傷)

    ・ベビーカー ベビーカーの上に立ち上がった際、バランスを崩して転倒(1歳女子)

    ・遊具 公園の滑り台で遊んでいた際、2メートルの高さから墜落し頭部をけが(2歳女子)

    誤飲

    ・たばこ テーブルの上に置いていたたばこを食べてしまい救急車を要請(1歳男子)

    ・玩具 自宅の部屋で、スーパーボールをのんでのどに詰まらせた(1歳男子、重篤)

    水難

    ・浴槽 子どもを1人で入浴させ、5分ほど目を離した後様子を見たところ、浴槽内でうつぶせに浮いていた(5歳女子、重篤)

    ・プール 区民プールで親が目を離していた間に溺れ、水深1.2メートルのプールの底に沈んでいるのを発見された(3歳女子)

    挟まれ

    ・自動車 パワーウインドーに頸部(けいぶ)が挟まれけが(2歳女子)

    ・エレベーター 扉が開く際、左腕が戸袋に巻き込まれ抜けなくなった(3歳男子)

    その他

    ・運動 体操教室で後転をしていた際、首をけが(4歳女子)

    ・歯ブラシ 歩きながら歯磨きをしていて転倒し、歯茎に歯ブラシが刺さった(2歳女子、重傷)

     ※カッコ内は年齢、性別、けがの重さ(記載のない事例は中等症以下)

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