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婚活

マスク着用のお見合い体験 見た目より人柄重視

各地で開催されている「マスクdeお見合い」。椅子を2列に並べて、2分間で一つずつ席を移動していく。終始マスクは外さない=DEFアニバーサリー提供

 3高(高学歴、高収入、高身長)が結婚したい男性の条件だったのは遠い昔。「3平」(平均的収入、平凡な外見、平穏な性格)を経て、今や「4低」(低姿勢、低依存、低リスク、低燃費)の時代に入り、男女とも結婚相手に外見の良さを求める割合が下がっているというデータがあるほどだ。そんな中、男女が使い捨てマスクで顔を覆って、結婚相手を探すお見合いパーティーが盛況という。33歳独身、婚活中の男性記者が体験し、人柄重視の婚活の背景を探った。【大村健一/デジタル報道センター】

見た目は気にしない 気にされたくもない

 冬でもないのに、使い捨てマスクをつけた男女約60人が東京都内のビルの一室に集まった。「見た目ではなく人柄を重視したい」という未婚の男女が申し込んだお見合いパーティー「マスクdeお見合い」の光景だ。好評で、およそ月1回のペースで開かれている。

 開始15分ほど前に会場に着くと、まず男性のみが待機する控室に案内された。参加要項に「マスク持参」とあり、全員がマスクを着用して受付を訪れ、次々に控室に案内される。参加費用は男性4000円、女性3000円。今回は男女ともに30代以上限定という条件だ。

「マスクdeお見合い」に参加した大村記者(左)。普段の服装で臨み、人柄で勝負する=DEFアニバーサリー提供

 記者は、いわゆる「お見合いパーティー」への参加は初めて。インターネット上にある「お見合いパーティー」のさまざまな体験談を読み、「まず自分がリラックスする」「自分のPRを押しつけず、相手の話をしっかり聞く」「焦らずに場を楽しむ」ことを心掛けた。プロフィルカードの記入など、控室での作業も他のパーティーと大きな違いはない。マスク婚活は、自己紹介のカードは本名を明かさずにニックネームのみで、年収の欄もないことが特徴か。書くのは趣味や好きな音楽、食べ物などについてで、カジュアルな服装の参加者が多く、「お見合い」という単語から連想される堅苦しさはなかった。

 お笑い芸人が司会を務め、「きょうは男性が肉食系になって、積極的に引っ張って」と巧みに声を掛ける。「では、ご対面です」という威勢のいい合図で男女の控室の間にあった壁が外された。仕掛けが派手で、テレビ番組に出ているような気分になる。

カジュアルな服装の参加者が多い「マスクdeお見合い」。 机がない分、膝を交えて話が弾むことも=DEFアニバーサリー提供

 まず、平行に並べられた椅子の列に1対1で向かい合って座る。一つずつ移動しながら約30人の女性全員と2分ずつ話した。「体験ルポ」とはいえ、あくまで取材。参加したきっかけも、それとなく聞いてみた。「口元を見られないので参加しやすかった。粗が隠せた」とほほ笑みながら話したのは都内で働く会社員の女性(37)。気持ちは分からなくもなかった。記者は身長168センチ、体重100キロ超。家族から結婚の重圧をかけられる年齢だが、普通の婚活パーティーに出ても「たぶん見向きもされないだろうな」という気持ちは少なからずある。マスクでは隠し切れない体形のコンプレックスなのだが、それでも「相手も人柄を重視したくて参加したはず」と思い込めば、少し気は楽になる。他の参加女性からも「自分も相手の見た目を気にしたくないし、相手にも自分の見た目を気にしてほしくない」という声を聞いた。

 その後は、互いに気に入った相手と自由に話す時間が設けられ、双方が了解すれば連絡先を交換する。どこの誰だか、顔も半分知られていない気楽さがある。記者も最後までマスクを着けたまま、参加者と無料通信アプリ「LINE」の連絡先を交換した。

 企画・運営に携わる「DEF(デフ)アニバーサリー」(本社・東京都千代田区)の松村佳依社長(26)は、「『参加したけど一人ぼっちで話し相手がいなかった』という参加者を出さないことを心がけている。友達からのラフな(お互いを特別意識しない)関係からスタートすることが目的です」と説明した。毎回、参加者の数や年齢層に応じて内容を練り直しているという。

 確かに、記者は取材相手と話し込むことが多いが、約2時間にわたって30人近くと代わる代わる会話をした経験は今回が初めて。参加者同士でしっかりとコミュニケーションを取ることを重視しているイベントだと感じた。唯一大変だったのは、マスクをしたままずっと会話をするため、声がこもりやすく、相手の言葉が聞き取りづらかったこと。のどを使いすぎたせいか、終わったときには声が少し枯れていた。

「人柄重視」の背景にあるもの

 それにしても、イベントは盛況だった。多くの若者を取材し、恋愛についての著書も多いマーケティングライターの牛窪恵さん(48)さんは「マスク以外にも目隠しや、仮面舞踏会のような仮面をつけた状態での婚活の参加者に取材したことがある。『見た目に自信がない』と思い込んでいる人は、話しやすくなるのだろう。また、現在は本名や顔を公開することのリスクが大きい時代でもある。ハロウィーンのように仮装する感覚で気軽に参加でき、マスクをしている連帯感も参加者同士で生まれるのではないか」と話す。

 しかし「一目ぼれ」という言葉もあるくらい、見た目は恋愛の重要な要素だったはずだが……。牛窪さんは「特に男性に多いのだが、普通のお見合いパーティーに参加し、異性の誰からも声を掛けられなかったとき、『顔で断られたんじゃないか?』と思ってしまうと、再び恋愛のステージになかなか登らなくなってしまう。あらかじめマスクをつけていたら、そのダメージは少なくなる」とマスクの効果を解説する。

20代、30代の未婚の男女に聞いた「結婚相手として重視したい条件」のグラフ=明治安田生活福祉研究所提供

 もう一つ、牛窪さんは「生物学的に考えれば見た目がいいことが恋愛において有利なのは自然なことだが、若い世代に取材すると、見た目でパートナーを選ぶのは『よこしま』という思いが強くなっている。若者は、表面上は甘い言葉で入社を誘うものの、実態はひどいブラック企業のようなものを特に嫌う。ふだんはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上で、(目の大きさなどを変えて見た目を良くする)『盛った』写真を『なんちゃって』の意味を込めて載せていても、婚活で外面や見た目をごまかすのは『悪いこと』という意識が根強いのでは」とも指摘した。「特に東日本大震災以降は激しい恋愛よりも、癒やしを求める傾向が強くなりつつある。一緒にいて居心地がいいコミュニケーション能力や価値観の一致が重要になり、外見の比重は減ったのかもしれない」。

 折しも、明治安田生活福祉研究所の今年3月のインターネット調査で、「結婚したい」と答えた独身の20代男性は3年前の2013年調査から28.4ポイント低下して38.7%、同女性で23.2ポイント低下して59%になったという結果が出たばかり。30代も「結婚したい」は男女とも10ポイント以上減り、5割を切っている。また、結婚相手に重視したい条件は20代、30代の男女とも1位が「物事の価値観が合う」、2位が「優しい」。「容姿や身長」は男性で8番目、女性で12番目と優先順位が低かった。

 では、「マスクdeお見合い」は少子化対策にもつながるのだろうか。「イベントの内容を聞くと、気軽にたくさんの異性と話をすることが重視されていると思った。一人っ子の割合も増え、身近に同年代の異性がいなかったケースが多い若い世代にとっては効果がありそう。すぐにつながるものではないかもしれないが、恋愛の『準備運動』になるのでは」と牛窪さん。そういえば、「他の婚活イベントと比べて、本気で婚活をしたい人よりも、イベント感覚で参加している人が多かった気がする」という女性参加者の声も聞いた。婚活になかなか踏み切れない層が、一歩目を踏み出すイベントとしては、手ごろな高さのハードルなのかもしれない。

仕掛け人は、あの芸能人

 「マスクdeお見合い」は、意外な「仕掛け人」がいる。人気お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんだ。

 社会問題への関心が高い田村さんは、少子化対策の一環として男女の出会いの場を提供しようと、マスクをつけて婚活をするイベントを2010年ごろから全国各地で開催してきた。その田村さんの投資を受け、2014年に設立された「DEFアニバーサリー」が、SNS上で恋活、婚活を支援するアプリを提供している「マッチアラーム」(本社・東京都港区)と共同で企画、運営している。5月は北海道、7月は福岡で開催し、全国各地での開催も視野に入れているという。今後も定期的に開催する予定で、「地方自治体からも『開催してほしい』との声を数多くもらっている。今夏は(「マスクdeお見合い」の)スマートフォン向けアプリのリリースも予定している。内面重視の出会いを提供することで、日本の少子化問題に本気で貢献したい」と主催者は意気込む。

 内面重視の堅実な婚活は、これからも広がりそうだ。

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