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千枚田耕作記

能登からみる農業/3 愛知の高校、保全に尽力 「心の故郷」交流、今も /石川

白米千枚田で草刈りに汗を流す安城東高の生徒たち=1986年6月、室良雄さん提供

 輪島市の白米(しろよね)千枚田は24日、草刈りを迎えた。田植えから2カ月余りがたち、成長した稲の鮮やかな緑色が広がる。こうした景観の保全に特に大きな役割を果たしたのが、愛知県安城(あんじょう)市にある県立安城東高校だった。

     同校は千枚田の荒廃が進んでいた1982年度から10年間、2年生が毎年、修学旅行で訪れ、勤労体験学習として草刈りに取り組んだ。参加者は延べ約4500人。この活動に触発され、輪島で保全に向けた機運が高まり、今に至っている。

     安城東が千枚田を選んだのは偶然の側面も大きい。同校では、社会奉仕や創造性・自発性を重んじ、修学旅行でも歴史、文化、自然などさまざまな体験を実施。76年度の開校から数年間は鳥取で酪農体験をしていた。

    千枚田体験を振り返る安城東高校元教諭の室良雄さん(前列中央)、大石純男さん(同右)や卒業生=愛知県安城市の同校で、堀文彦撮影

     転機は、訪問先の見直し中だった81年度。当時、地理教諭として赴任していた室(むろ)良雄さん(72)=愛知県豊田市=が出勤途中に車中のラジオで、千枚田の耕作者不足と荒廃化のニュースを耳にした。見直しに関わっていた室さんは「これだ!」と直感。校長の承諾の下、輪島市に草刈り活動を申し入れ、1年の準備を経て82年5月に初実施した。室さんは「能登の人たちの苦労を追体験することで、知恵と勤労の大切さを学び、文化保存にも役立つと考えた」と明かす。

     生徒たちは3泊4日の日程で金沢や千里浜、輪島朝市などを訪れた。千枚田では体操服に着替えて鎌を手にし、背丈近くもある雑草の刈り取りに半日汗を流した。

     85年度に体験した加藤和茂さん(47)=安城市=は「最初は嫌で仕方がなかったが、作業後は日本海に向かってみんなで万歳した」と振り返る。教諭として生徒を数回引率した大石純男さん(65)=同市=も「終わってみると生徒は達成感でいっぱいだった」と話す。

     千枚田体験は旅行先の再変更に伴い、91年度で最後となった。しかし、2013年には同校の元教諭や元保護者らが「わじま・あんじょう友の会」を結成し、交流は今も続く。会では毎年、千枚田の体験旅行を行うほか、有志が節目に作業に参加している。24日も友の会副会長の浅井浩一さん(56)ら卒業生3人が訪れ、草刈りに精を出した。83年度に体験し、この日も参加した同会事務局長の筒井広治(ひろはる)さん(50)は「当時の作業が今の景観につながっていると思うとうれしい」と喜ぶ。

     千枚田を望む展望広場の一角には、安城東の草刈り体験10周年の記念碑が建つ。碑には校名とともに「能登は心のふるさと」と刻まれている。【堀文彦】(次回は8月下旬掲載予定)

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