本は読まないと、もったいない
今年、デビュー10周年を迎える児童文学作家の工藤純子さん、廣嶋玲子さん、濱野京子さん、菅野雪虫さん、まはら三桃さん。5人が「図書室」をテーマにつづった短編を収録した「ぐるぐるの図書室」(講談社)が10月に出版されます。巻末には、5人の座談会の模様も収められる予定です。6月に行われた座談会をのぞいてみました。【篠口純子】
学級文庫や図書館で
−−子どものころ、どんな本を読みましたか。
まはらさん 小学3、4年生の時の先生が学級文庫を作ってくれました。そこに友達が「メアリー・ポピンズ」や「ドリトル先生」を持ってきて、読書の楽しみを知りました。
濱野さん 小学校の隣の図書館に、毎日のように通っていました。そこで「世界の名作」を読みました。小学3年生の時、おこづかいで初めて買った本が「若草物語」でした。
工藤さん 図書館はよく通っていました。空想するのが好きで、みんなもそうかと思ったけれど違うことに気付きました。小学5年生の時、友達に「物語を書いてみない」と誘われ、ノートに物語を書いて交換を始めました。
菅野さん おもしろい話を本で仕入れて、学校の友達に語っていました。楽しい話をすればケンカをしなくなると思って、いろいろな話をしました。
廣嶋さん 学校が嫌いで本の世界に逃げていました。ファンタジーをむさぼるように読みました。
やり直すことができる
−−児童文学を書く時に注意していることはありますか。
工藤さん 世の中そんなに捨てたものではない、ということを伝えたいです。子どもの世界は、学校か家だけの狭いもの。「もうダメ」と思っても、逃げることも、やり直すこともできます。
濱野さん いろいろな選択肢があることを示して、風穴を開けてあげたいです。
廣嶋さん 言葉を難しくしすぎない、文章を長くしすぎないようにしています。何度も読み直しながらけずっていきます。
菅野さん キャラクターを自分のテーマを語る道具にはしません。これは大人が好きな子どもだな、と思うようなキャラクターは出したくないです。
まはらさん 作品を書くために取材をすることが多いです。「たまごを持つように」は弓道が題材でしたが、弓はひかせてもらわなかった。一番肝心なところは残し、どんな感触がするかを探るのが仕事だと思っています。
−−子どもたちへメッセージを。
まはらさん 本を読むのは面倒だし、眠くなるし、分からないこともあるかもしれないけれど、ほんのちょっとがんばってほしいです。
廣嶋さん 自分の好きな本が必ずあるはず。1冊だけで本が嫌いだと決めつけないでください。
工藤さん 表紙がいい、題名がおもしろそうなど、何でもいいからきっかけを作ってほしいです。本を読むことによって得られることは大きい。世界が広がります。
菅野さん 「いい本を読みなさい」と言われることがあるけれど、絵本でも図鑑でも何を読んでもいいと思います。
濱野さん ご飯を食べないと生きていけないけれど、本は読まなくても生きていけます。でも、読まないと、もったいないです。
◆5人の主な作品
工藤純子さん
☆プティ・パティシエール マカロンは夢のはじまり(ポプラ社/1296円)
廣嶋玲子さん
☆ふしぎ駄菓子屋銭天堂6(偕成社/972円)
濱野京子さん
☆くりぃむパン(くもん出版、1404円)
野雪虫さん
☆チポロ(講談社/1512円)
まはら三桃さん
☆白をつなぐ(小学館/1512円)