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事務局長、米大統領「所感」評価を後悔

日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の事務局長、田中熙巳さん=福島祥撮影

「死を抽象化している。絶対に認められない」

 オバマ米大統領が広島を訪れた5月27日。式典に臨席した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の事務局長、田中熙巳(てるみ)さん(84)=埼玉県新座市=は、オバマ氏の「所感」を直後の記者会見で「素晴らしい」と評価した。そのことを悔いてつづった「反省の記」が今、田中さんの手元にある。オバマ氏が「死が降ってきて」と表現したことに、後から気づいたからだ。「死を『作った』んだ。謝罪の証しとして、核兵器をなくしてほしい」と、一刻も早い核兵器廃絶の実現を訴え続けている。

 現職の米大統領として初めてオバマ氏が広島を訪れたあの日、田中さんは被団協メンバー2人と平和記念公園であった式典に参列していた。

 オバマ氏の所感は同時通訳されたが、文面は配布されなかった。田中さんは緊張の中で聴き、一緒に参列した2人と内容を確認し合う余裕もないまま、直後の記者会見で感想を尋ねられた。「広島と長崎は、私たちの道義的な目覚めの始まり」などと述べた後半部分が印象に残っていた。「素晴らしい文章だ」と評価した。一方で「生きている間に、核兵器廃絶は達成できないかもしれない」と述べたことに対し、「がっかりした」と指摘した。

 翌朝、新聞2紙を手に上り新幹線で帰路につき、所感の日本語訳が載るページを開いた。「71年前、晴天の朝、空から死が降ってきて世界が変わりました」と始まっていた。がくぜんとした。「死が『降ってきた』んじゃないだろう。死を抽象化している。絶対に認められない」。所感を評価した自分が許せず、車内でパソコンを開き、「反省の記」を書き始めた。書いては消すことを繰り返すうちに「腹が立ってきて、途中でやめた」という。

 「反省の記」には、自身を責める言葉がつづられている。

 内容を振り返ることなく、記者たちには積極的な面を評価し、具体的道筋についてまったく触れていないことへの不満も言った。しかし、それにしても残念に思っている。しゃべった責任は重く受け止めなければならない。

 田中さんは13歳の時、長崎の爆心地から3.2キロの自宅で被爆した。爆風で外れたガラス戸などの下敷きになったが、奇跡的にけがはなかった。3日後、親族の安否を確かめるため爆心地に入ると、黒焦げの遺体が散乱していた。「ハエが卵を産み、ウジがわいている人もいた」。原爆は伯母ら親族5人の命を奪っていった。

 今年で創設60年を迎える被団協は6月16日、東京で開いた総会で「大統領としての(原爆投下に関する)責任は一切語らなかった」と、オバマ氏の演説を非難する決議をした。田中さんは「『謝ります』と言ってくれればいいわけじゃない。世界中の核兵器をなくすため、先頭に立ってほしい」と力を込める。「71年前、死は自然現象のように『降ってきた』のではない。原爆を投下して『作った』んだ。人の世であってはいけない地獄を作ったんだ」【福島祥】

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