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若者に無神論 「アラブの春」後、自由求め

3年前にイスラム教から無神論に転じた大学生のカリーム・バンナーさん=エジプト北部アレクサンドリアで、秋山信一撮影

 【アレクサンドリア(エジプト北部)で秋山信一】イスラム教やキリスト教など一神教が支配的なエジプトで、無神論を唱える若者が出てきている。民主化要求運動「アラブの春」による2011年の革命後、自由を求める機運が高まったことが背景にある。社会の逆風は強いが、「絶対的存在」の揺らぎは、保守的な中東で宗教観が多様化していく兆候だとの指摘もある。

 北部アレクサンドリアの大学生、カリーム・バンナーさん(23)は、イスラム組織ムスリム同胞団の支持者だった。だが、12年6月に就任した同胞団出身のモルシ大統領(当時)が独善的な政権運営に走ったのを見て、「宗教が集票や権力独占の道具に使われた」と感じた。宗教自体に疑問を抱き、交流サイト「フェイスブック」で無神論者だと明かした。

 14年11月、自宅前で突然、2人の男に殴られた。男たちが「こいつは無神論者だ」と叫ぶと、近隣住民も暴行に加わった。警察署に被害を届けると、そこには加害者の男たちがおり、フェイスブックの書き込みを根拠に神を冒とくした容疑で告発された。後に起訴され、現在も公判中だ。

 「大学も停学になり、家も借りられない。無神論者だと明かしたことは後悔している」。バンナーさんは取材中に涙を浮かべた。「でも、自分の考えは間違っていない。悪いのは自由を尊重しないエジプト社会だ」

 米中央情報局(CIA)によると、エジプト国民の9割はイスラム教徒、1割をキリスト教徒が占める。宗教は国民のIDカードにも記載されている。だが14年にイスラム教スンニ派の最高権威機関アズハルが大学生6000人を対象にした調査で、12.3%が無神論者だと判明した。

 国立アインシャムス大学のサミア・へドル教授(社会学)は「革命で国民は自由の意味を知った。インターネットの普及と相まって宗教観や思想の幅が広がった」と指摘する。

 ただ、エジプト社会に宗教は深く根付いており、無神論者は迫害される傾向にある。それはイスラム教社会に限らない。

 アレクサンドリアの公務員の男性、ミナさん(30)も迫害を経験した一人。キリスト教の一派コプト教徒として幼い頃から教会の催事を手伝ってきたが、今は無神論者だ。

 きっかけは13年10月に教会が無神論者に回心を促すため開いた集会だった。当時はミナさんも説得役として参加。「神が存在する証拠はどこにあるのだ」との無神論者の主張に対し、教会の指導者は「あなた自身が神による創造の証明だ」と応じた。ミナさんは無神論者の言い分に合理性を感じた。自分でも「証拠」を探してみたが、見つからなかった。

 その後、無神論について語るようになったミナさんを周囲は煙たがった。教会近くでカフェを経営していたが、教会指導者が信者にカフェに行かないよう忠告。客足は途絶え、閉店に追い込まれた。ミナさんは「宗教から離れれば、地域社会でも孤立する」と嘆く。

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