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ナビゲート2016

容疑者と私たちは、さほど違わない=粥川準二(科学ライター)

 相模原市の19人殺害から1カ月。

     容疑者が「障害者なんていなくなればいい」と供述したのを知って、彼の考え方と「優生思想」と呼ばれる考え方との距離が気になった。その後、多くの識者やネットユーザーらが彼の考え方を優生思想、そしてそれを実践した国家「ナチスドイツ」と結びつけて論じた。そのことに異論はない。容疑者の考え方は優生思想そのもので、数十万人の障害者を殺したナチスドイツと変わらない。

     しかし、容疑者をナチスドイツに結びつけることで、彼を自分たちとはまったく違う異常者とみなすことは、端的にいって間違いである。

     まず優生思想はナチスの専売特許ではない。障害者への強制不妊手術は、戦後の日本を含む民主主義国家で大規模に行われていた。また優生思想をまったく持っていない者は少ない。その証拠に、血液検査だけで胎児の染色体障害がわかる「新型出生前診断」を受け、確定診断で胎児の障害が確定すると、97%が中絶を選ぶことがわかっている。「障害者なんていなくなればいい」と思っているのは容疑者だけではない。たぶん読者のあなたも、筆者の僕も、だ。

     そのうえで気づいてほしいのは、健常者ということになっているあなたや僕がかろうじて障害者でないのは、単なる運にすぎないこと。そして誰でも年を取れば、障害者みたいな存在にならざるを得ないことだ。だとすれば障害者が暮らしやすい社会をつくることは健常者の義務だ。自らの優生思想を自覚しつつ、その目標を達成することは困難かもしれない。が、目指す価値は十分にある。


     林英一、金原ひとみ、長有紀枝、吉崎達彦、粥川準二の各氏が交代で執筆、毎週火曜日に掲載します。

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