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社説

相模原事件1カ月 障害者を地域の隣人に

 相模原市の知的障害者入所施設「津久井やまゆり園」で重度障害者19人が殺害され27人が負傷した事件から1カ月が過ぎた。

     殺人容疑で逮捕された植松聖容疑者が事件5カ月前に精神科へ措置入院していたことから、現在、厚生労働省は再発防止のため措置入院や退院後のフォローのあり方について検討している。各地の自治体や障害者施設では防犯体制の強化、警察との連携などを模索している。

     「障害者は不幸を作ることしかできない」という容疑者の言葉に社会が揺れた1カ月でもあった。障害者や関係団体は声明や集会で抗議の声を上げ、賛同の輪が広がった。その一方で容疑者に共感を示す意見がネットなどで散見された。障害者を否定的に見る社会の暗い一面が事件によって表に出たとも言える。

     容疑者は措置入院するまで同施設で働く職員だった。勤務中から障害者に対する虐待行為や暴言があったという。施設側の指導や改善策も含め、どのような状況で容疑者がゆがんだ障害者観を形成していったのかを詳細に検証する必要がある。

     容疑者は声を掛けて返事がなかった重度の障害者から殺害したと供述したとされる。しかし、近隣の住民や友達、ボランティアに囲まれ、地域に溶け込んで暮らしている重度障害者も最近は増えている。家族が介護を担うのではなく、少人数のグループホームで暮らし、ヘルパーや通所施設などを利用して生活しているのである。

     入所施設の職員だった容疑者は「保護者の疲れ切った表情」を見て「障害者は不幸を作る」と思ったというが、最近の地域福祉の現場では障害のある子に愛情を注ぐ保護者の顔をいくらでも見ることができる。

     もちろん、入所施設で働く職員にも熱意や善意がある人が多く、自傷他害などで支援の難しい障害者の貴重な受け皿になっている施設もある。しかし、施設入所によって地域社会での豊かな人間関係から障害者を切り離し、社会から障害者の素顔を見えなくしていることについても深く考える機会にしたい。

     施設の施錠を強固にし監視カメラを増設して防犯体制を強化しても、障害者への偏見や優生思想の侵入を防ぐことはできない。地域福祉の現場では施錠や壁ではなく、理解や配慮で障害者を守っているのである。

     悲惨な事件ではあったが、障害者を守りたいとの善意も広がった1カ月だった。障害者は「施設内でしか生きられない特別な人」ではなく、「地域で暮らすふつうの隣人」であるはずだ。多様性を身近に感じられる社会を築くことで偏見をなくしていきたい。

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