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余録

世界50カ国以上で行われ…

 世界50カ国以上で行われ、サッカーに次ぐ競技人口を擁しながらオリンピックで1900年パリ大会を最後に実施されていない競技がある。18世紀の英国で公式ルールが作られ、野球の原形とされるクリケットだ▲スポーツマンシップは公正、公平さを最も重視するクリケットの精神から生まれたと言われている。英語で「それはクリケットではない」と言えば「それはフェアではない」を意味する▲選手宣誓にも登場するスポーツマンシップとは何か。戦前、英国のパブリックスクールを経てケンブリッジ大で学んだ英文学者の池田潔(いけだきよし)さんは「自由と規律」(岩波新書)でクリケットにまつわる逸話を紹介している▲学生生活最後の試合で、ある選手が大記録達成まであと一歩と迫った。この選手が打席に立つと守備に就いていた相手チームが一斉に引き揚げた。投じられたのは真ん中への緩い球で、バットを当てるだけでよかった。だが、わざと空振りをしてアウトになった▲記録を達成してほしいという厚意は分かったが、自分にとって一生に一度の大切な試合だったのでと後年この選手は明かしたという。スポーツマンシップとは、対等な条件でのみ勝負に臨む心掛けを言うのであろうと池田さんは書いている。スポーツは勝ちさえすればいい、というものではない▲負けたとしても、どんな態度を取るかが問われる。先のリオデジャネイロ五輪でウクライナの体操選手は最後の最後に逆転され、優勝を逃した。だが、記者会見では「伝説の男と戦えて幸せだ」と話し、金メダルの内村航平(うちむらこうへい)選手をたたえた。クリケットの精神は五輪に宿っている。

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