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社説 テロ準備罪 本当に必要性はあるか

 「テロ等組織犯罪準備罪」の新設を政府が検討している。国会で3度廃案になった「共謀罪」の内容を、成立要件を絞って盛り込むものだ。9月召集の臨時国会で、組織犯罪処罰法改正案を提出予定という。

     共謀罪は、具体的な犯罪について2人以上が話し合って合意するだけで成立する犯罪だ。小泉政権時代の2003年から3年連続で関連法案が提出されたが、「一般市民が漠然と犯罪の実行を相談しただけで処罰されるのでは」との懸念が強く、いずれも廃案に追い込まれた。

     20年の東京五輪・パラリンピックを前に、政府はテロ対策の一環と位置づけるが、立法の必要性について国会での徹底的な議論が必要だ。

     テロをめぐる国際状況は、確かに小泉政権時代と一変した。過激派組織「イスラム国」によるテロが世界で頻発している。7月のバングラデシュでの人質テロ事件では日本人7人が犠牲になった。国内でのこうしたテロ防止は政府の最重要課題だ。

     政府は昨年末に「国際テロ情報収集ユニット」を発足させ、テロ対策に取り組んでいる。共謀罪が、テロの芽をいち早く摘む重要手段になると考えたのだろう。とはいえ、10年以上再提出の動きがなかった法案である。リオデジャネイロ五輪の盛り上がりに便乗し、にわかに持ちだしてきたような唐突感は否めない。

     00年に国連総会は、国際組織犯罪防止条約を採択した。条約は、国境を越える組織犯罪へ対処するため、重大な犯罪について共謀罪などを設けることを各国に求めた。ただし、共謀罪がその国の法体系になじまない場合があることが条約の起草段階で検討され、「各国が国内法の基本原則に従って(条約を)実施する」と明文化された。

     日本も条約に署名し、03年に国会が承認した。しかし政府は、条約締結には共謀罪の新設が必要だとの立場で、いまだ締結に至っていない。

     一方、日本の刑法では、一定の重大犯罪について、予備罪や準備罪などで、未遂より前の段階で処罰ができる規定が既にある。法律家の中には、テロに絡む犯罪でも既存の法の枠内で摘発ができ、条約締結は可能だとの意見がある。共謀罪の必要性は、改めて議論する際の重要な論点だ。

     政府は今回、適用対象を絞り込む方針だ。また、合議に加え、犯罪の準備行為が行われることも要件に加えるとみられる。

     だが、定義の仕方によっては、幅広い解釈が可能になる。廃案になった法案と同様、対象罪種は600を超えるとみられる。既遂の処罰を原則とする刑法の原則は大きく変わる。テロをめぐる環境変化を踏まえても副作用は大きい。

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