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社説

ロボット兵器 戦争をゲーム化させる

 人の手を介さずに、人工知能(AI)を搭載したロボット兵器が自ら判断し、「敵」を殺傷する。そんな自律型ロボットによる戦争が現実になろうとしている。

     イスラエル軍が、自動運転の軍用車を世界で初めて実戦配備し始めたことを本紙の取材に明らかにした。現状ではまだ遠隔操作だが、完全自動化も可能な状態だという。同様の兵器はイスラエルのほか、米国、中国、ロシアなど少なくとも6カ国に開発能力があるとされる。

     人を殺傷しても、現場から遠い操縦室では被害者の苦しみも恐怖も感じない。攻撃の決断まで機械にゆだねることになれば、戦争を現実感のない「ゲーム」にしてしまう。

     国際平和・人権団体などは開発中止を求めている。物理学者のホーキング博士らは昨年、自律型AI兵器の開発禁止を求めて1万2000人以上の研究者らの署名を添えた公開書簡を公表した。

     こうした呼びかけに応え、非人道的な兵器を規制する特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW、123カ国加盟)の非公式専門家会合は今年4月、「自律型致死兵器システム」の規制について検討を求める勧告を採択した。12月のCCW再検討会議で承認されれば、来年から公式の専門家会合がスタートする。

     しかし、規制対象の定義の段階から議論は難航しそうだ。民生用ロボット技術の開発が進み、AIによる自動運転車の実用化も近い。日本は兵器開発には反対だが、災害救助ロボットなどに使われる特定の技術を規制することには反対の立場だ。技術を軍事転用すれば「兵器」になるが、線引きは難しい。

     遠隔操作する無人機(ドローン)など広義のロボット兵器は、すでに実戦で使われている。米国は自国兵の被害を減らすためにアフガニスタンなどで「対テロ戦争」に無人攻撃機を投入しており、規制に消極的だとされる。

     米南部ダラスでは7月、警察官5人が死亡した銃撃事件で遠隔操作によるロボットが投入され、容疑者を爆殺したことが議論を呼んだ。警察官の危険を回避するためだとはいえ人道上の疑問はぬぐえない。

     本来、人には人を殺すことへの心理的抵抗がある。それが、何の痛みを感じることもなく敵を殺傷できるようになれば、戦闘行為に歯止めがきかなくなる。AIのプログラムに「人道的判断」を組み込めばすむという話ではない。

     自制なき技術開発は、従来の戦争の概念を大きく変えることになる。私たちは大きな転換点に立っている。規制の国際的な議論を急がなければならない。

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