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富山男前列伝(下) シンプルに生きる

写真・文 徳光典子

富山の“男前”は、ちょっと控えめでやわらかで、どこかフワッと明るい人が多い。気になる“男前”を、富山のパワースポットや、その人の仕事場で撮影した3回シリーズの最終回。

(2014年12月に日刊デジタル雑誌「毎日スポニチTAP-i」掲載。年齢は当時)


<林 誠一郎 29歳*会社員>

喫茶店とお客さまとの関係は微妙だ。雪が降りましたねとか、好きな音楽や本の話題で言葉をかわすことはあるけれど、名前も職業も知らない。場合によっては、特にお話しすることもなく、ちょっと目で会話するにとどめる。林さんは〝週末バイクで現れて、チャイとチーズトーストを注文し、分厚い本を静かに何時間も読みふけるお兄さん〟として、紅茶の店「アナザホリデー」の数年来の常連さまである。

1杯の紅茶を飲むため、バイクで兵庫県芦屋まで、ふらりと……。ブラジルの友達に会いにふらり……。年末年始はインドに……。どこへでも、だいたいこの服装にこのカバンで行ってしまうらしい。「アナザホリデー」横の路地にて。

1週間働いたら、週末はここで好きな本を読んでリセットするのだという。のんびりと気ままに、どこへでも行ける自由を最優先とする林さんのスタイルは、とてもシンプル。

カバンに入っていた本は、パウロ・コエーリョの「アルケミスト」と、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」でした。


<田中 裕信 33歳*キッチン花水木 店主>

「キッチン花水木」は富山市街地にある、田中さんがたった1人で、1日1組だけの予約制で料理を出す小さな人気店。野菜もお魚も、信頼ある農家さんや港の市場で買い付ける。時には自ら山へ入る、海にも潜る。自然なものが一番おいしいし誰が食べてもわかる、と気取らない天真らんまん。

野菜の仕入れについて行った。野菜を育てるのが大好きで名人の生産者・中田博史(ひろふみ)さんの農場には、たくさんのハウスにいろんな種類の野菜や花。今、何を作ってるとか、超ド級の天然マイタケをみつけたとか、熊鍋、イノシシのしゃぶしゃぶ……。田中さんと中田さん、2人のおいしいものトークは止まらない。

とにかくいろんなアイデアとチャレンジで、中田さんにほしい野菜をリクエストしたり、ハウスのものをパクリと試食したりする料理人・田中さん。2人は相思相愛です。

「花水木」で仕込み中。この人の料理食べたら、絶対元気になるよ。


<橋本 匠吾 20歳*学生>

空から舞い降りたみたいだ。あるいは、昔話の中から抜け出してきたみたい。いい意味で、絶妙に、時代も年齢も性別も超えているようなミステリアスな男の子をみつけた。紅茶が好きな、「アナザホリデー」の常連さま。お母様とのティータイム中にスカウト。

古いものが好きで、専攻は歴史文化。たばこはキセルで吸うらしい。火鉢がほしいとか。似合いすぎ。

  

  

  

  

 

 

  

  

富山市岩瀬にある金比羅社にて。

自由にフワフワ歩き回って……最後に植え込みのわずかに残った真っ赤な紅葉の前で。この葉が落ちたら、富山は色のないグレーな冬です。


徳光典子さんプロフィル

1969年大阪生まれ。コマーシャルフォトスタジオ勤務の後、フリーに。大阪・阿倍野というディープな町のアートマーケットに、フィルムカメラでモノクロポートレートを撮影、手作業で現像・プリントをする店を出したのが、初めての写真の仕事。ブライダルや出産写真、舞台などの撮影をするようになる。1999年、結婚を機に富山へ。夫が経営する紅茶の店「アナザホリデー」(富山市岩瀬)を拠点に活動。各種撮影のほか、映画館「フォルツァ総曲輪」(富山市総曲輪)の市民講座「スコーラフォルツァ」女子カメラ部講師、女性向けの町歩きやエコツアーの写真ワークショップなども開催。個展・グループ展多数。

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