豊富な知識で魚の魅力を伝え続けているさかなクンが、初の自叙伝「さかなクンの一魚一会〜まいにち夢中な人生!〜」を出版しました。生い立ちから小中学生時代、「さかなクン」として活躍するまでの個性あふれる半生を初めて明かします。好きなことを貫き通す大切さが書かれています。【篠口純子】
☆どうして自叙伝を書いたのですか。
★まさか自叙伝が出るとは、ギョギョギョと驚いています。「なぜ魚が好きになったの?」とよく聞かれ、今にいたるまでのことを振り返りました。ハイハイしていたころから、絵を描くのが大好き。トラックや妖怪に夢中になり、タコや魚と出合いました。一つ一つを思い出しながら書きました。
☆書くのは大変でしたか。
★記憶をたどっても思い出せないこともあって母に聞いたり、20年ぶりに連絡をとった友達もいました。母の思いやみんなとの出会いなど、さかなクンにまつわることがつまっています。もちろん人だけでなく海の生き物も大集合しています。
☆お母さんの存在が大きいようですね。
★母はいつも紙と鉛筆を用意してくれ、トラックが好きになったらトラックがいっぱい止まっているところに、魚が好きになったら町で一番大きな魚屋に連れて行ってくれました。魚に夢中になって学校の成績は悪かったのですが、先生に「もっと勉強して」と言われた時は、「うちの子はこのままでいいんです」と言ってくれました。好きなことをやらせてくれました。
☆魚以外に夢中になったものはありますか。
★お魚と一緒に続けているのが楽器です。中学生の時、水槽がたくさん並んでいる部活だと勘違いして吹奏楽部に入りました。今年は東京スカパラダイスオーケストラとCMに出たり、ライブをしたりしました。
☆進路で悩んだ時、どうやって気持ちを切り替えましたか。
★元気がない時はお魚を見ます。水族館の実習で失敗した時も、真っ赤なエビスダイが3匹こっちを見てくれました。「そんなのたいしたことないぞ。世の中はもっと厳しいぞ」と言っているようでした。魚の方がはるかに命の危険に出合うことが多い。気合も入るし、元気ももらえます。図鑑を見ているだけでもうれしいし、絵を描いても冷静になれます。楽器を吹いても元気になります。楽しいこと、自分に合うことがいっぱいあればあるほど立ち直れると思います。夢中になれることがあったら大切にしてほしいです。
☆魚から得たことは。
★見て感動、触れて感動、音を出す魚もいるので聞いて感動、においをかぐ感動、味わう感動があります。魚から感動をもらって感謝の気持ちでいっぱい。それを還元するには、絵を描いて本にすることだと思いました。出合った時の感動があるので「一魚一会」です。
プロフィル◇
東京都出身、千葉県館山市在住。東京海洋大学客員准教授、東京海洋大学名誉博士。2001年、TBS系列「どうぶつ奇想天外!」に出演。10年、絶滅したと思われていたクニマスの生息確認に貢献。11年に農林水産省「お魚大使」、12年に文部科学省「日本ユネスコ国内委員会広報大使」などを務める。