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余録

道灌山と呼ばれる東京・西日暮里あたりの台地は江戸時代…

 道灌山(どうかんやま)と呼ばれる東京・西日暮里(にしにっぽり)あたりの台地は江戸時代、虫の音を楽しむ秋の行楽地だった。丘の上では3人の男性が酒を酌み交わし、かごを手にした子供が女性に連れられて楽しそうに坂道を上る。江戸名所図会(ずえ)が虫聴きという風流な光景を描いている▲万葉集(まんようしゅう)をはじめ鳴く虫を題材にした和歌や文学は古くからある。平安貴族の間ではスズムシやマツムシを捕らえて宮中に献上する野遊びが流行した。江戸期になると虫売りという商売が生まれ、鳴き声に親しむ風習は庶民の生活の一部になった▲昔から酒造りの盛んな兵庫県伊丹市の中心部で、虫聴きを再現する町ぐるみのイベントが9日から9日間の予定で始まる。かごに入ったコオロギやキリギリスなど約15種3000匹以上が街路樹や店先などで音色を響かせ合う▲以前は市昆虫館で毎年秋に企画展をしていた。野外で鑑賞すればより味わい深いと職員の坂本昇(さかもとのぼる)さんらが考えて、江戸時代から残る国の重要文化財の酒蔵周辺を会場にして2006年に始めた。それから10年がたち、かごを置くところは商店街や金融機関に広がった▲店主や子供らが虫の採集や飼育に協力し、世代間交流も活発になった。鳴き声を聞きながらの星見会や落語会、狂言鑑賞など市民が発案した関連行事も増えて多彩だ。地域の活性化を担う初秋の風物詩となり、わが町に愛着を持つようになった住民は少なくない▲「鳴く虫が町中にたくさんいることに気づく人も増えた」と坂本さんは言う。大都市にいても駅前、大通り、高層ビルの植え込みから聞こえてくる。耳を澄ませて季節の移ろいを感じたい。

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