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ポケモンGOをどう規制するのか

 紙面審査委員会は、編集編成局から独立した組織で、ベテラン記者5人で構成しています。読者の視点に立ち、ニュースの価値判断の妥当性や記事の正確性、分かりやすさ、見出し、レイアウト、写真の適否、文章表現や用字用語の正確性などを審査します。審査対象は、基本的に東京で発行された最終版を基にしています。指摘する内容は毎週「紙面審査週報」にまとめて社員に公開し、毎週金曜日午後、紙面製作に関わる編集編成局の全部長が集まり約1時間、指摘の内容について議論します。ご紹介するのは、その議論の一部です。

     以下に出てくる「幹事」は、部長会でその週の指摘を担当する紙面審査委員会のメンバーです。「司会」は編集編成局次長です。

    <8月26日>

    ■リオデジャネイロ五輪 選手の呼び捨ての総括は

     幹事 さまざまなドラマが演じられたリオデジャネイロ五輪が閉幕した。本紙はリオ五輪の代表選手は日本人以外も含めて掲載面に関係なく、記事、見出し、写真説明で敬称なしを原則にした。本社の基準では、人名には原則として敬称・呼称をつけ、「運動記事に載る運動選手と文芸・芸能記事に載る文芸・芸能人」については例外として敬称・呼称を省いている。過去の五輪報道では基準通りに1面や運動面の記事では敬称なし、社会面では敬称ありと掲載面によって変えていたが、リオ五輪では地域面をのぞいて「選手」の表記を省いた。敬称なしにしたのは代表選手だけで、競泳男子800メートルリレーで銅メダルを獲得した8月10日夕刊のスポーツ面では、アテネ、北京五輪で100メートル、200メートルの平泳ぎ2冠を達成した北島康介(33)は「北島康介さん」と敬称付きだった。また、社会面の夏の甲子園の記事は「○○主将」「○○投手」など呼称付きだったため、社会面では同じスポーツ記事でも敬称ありとなしが混在した。

     他紙は朝日、産経は敬称なしで統一し、読売、東京、日経は社会面の記事については敬称付きと分かれた。掲載面によって変えるより統一した方が読みやすく、紙面審査委員会としては違和感がなかったという意見だが、愛読者センターには「スポーツ面なら構わないが、社会面も敬称略にされるのは読んでいて気持ちのいいものではない」という意見が寄せられた。リオ五輪での実施状況を踏まえ、リオ・パラリンピック報道について方針が決まっているなら聞きたい。今後、五輪記事以外に拡大することはあるのだろうか。

     司会 リオ五輪限定ということで通達が出たと思うが、出稿部として運動部は今回どうだったか。

     運動部長 運動部としてはスポーツ面では選手を呼び捨てにするのが通常だったので違和感はなかった。社会面に出稿する際も、かえってスムーズに原稿が書けたという部分はある。もう一つはスポーツ面に出すつもりだった原稿が社会面に載る際に「選手」を付けるとか、逆もそうだが、そういう作業がなくなった。見出し等でも生き生きとした見出しが付けられるのかなというので、運動部としては「選手」と付けないのは歓迎するところだ。北島康介さんについては現役を引退したこともあって、「さん」を付けている。もし地の文を呼び捨てにして、会話の文は「さん」が付いたら変なので統一した。パラリンピックも同様に報道できれば、原稿も書きやすく読みやすく、見出しも付けやすいのではないかと思う。

     司会 社会部はこれまで「選手」を付けてきたが、どうだったか。

     社会部長 社会面では呼称がなくても違和感はなかったという印象だ。読者からの「気持ちのいいものではなかった」という指摘はどの記事についてなのか検証してみたいと思う。甲子園の高校野球と同じ時期だったのでバラつきが出たが、五輪選手はアマチュアとは言いながら、プロに近いトップクラスの選手なので、高校球児とバラつきが出てもやむをえなかったという気がする。

     司会 通達を出した校閲担当に、パラリンピックも含めてどうしていくのか聞きたい。

     校閲担当部長 もともと本社の規定では、基本的には本記以外には呼称を付けることになっていて、サイドとか受けは、1面に掲載されても本来は敬称を付けるのが原則だ。ところが同じ面の中で呼称のある記事とない記事の不統一感が大きくて、1面に載るとサイドでも敬称、呼称を取るという運用が今までされてきた。五輪ではそれに加えて社会面と1面との間で記事が行ったり来たりするという実務上の要請もあって、最初から「選手」を全部取って運用してきた。「選手」を付けると見出しがビビッドにならないという理由もあり、拡大していこうという提起が運動面の整理担当からあった。読者から違和感があるという意見がきたが、本記についてはプロに近い選手もプロ選手もいるので、呼称を取ることに読者は納得してくれると思う。ただ読み物で書く時、例えば女子レスリングの吉田沙保里選手が負けた日の社会面だが、「立ち上がった吉田はスタンド最前列にいた母幸代さんと次兄栄利さんのもとへ向かい、『ごめんね』と大粒の涙を流しながら謝った。幸代さんらは…」というように、家族には「さん」を付けて、本人を新聞社が呼び捨てにするのは、ちょっとなれなれしいんじゃないかという印象を与えるかもしれない。時代とともに読者の感覚も変わってくるので、呼称を取ることで読者がどう感じるか、書いている側はどう思うのかを考えてみたいと思い、今回の通達を出した。五輪選手とパラリンピック選手の書き方を変えるのはおかしいので、パラリンピックについても五輪と同じように扱う方針でいきたいと考えている。

    ■ポケモンGOをどう規制するのか

     幹事 8月5日朝刊で、第3次安倍再改造内閣の発足を受けた緊急の全国世論調査の結果を報じた。質問の一つにスマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO」に関するものがあり、内政面に<「ポケGO規制を」73%>という記事を載せた。ポケモンGOについて「歩きスマホをする人が増えたり自動車事故が起きたりするなど社会問題化しています。あなたはこうしたゲームに規制を設けるべきだと思いますか」と尋ねたところ、「規制を設けるべきだ」と答えた人が73%に上ったという。

     さまざまなトラブルが起きており、多くの人が「何とかしなきゃ」と考えるのは当然とも思える。しかし、ポケモンGOをどうやって規制しろというのだろうか。ユーザー側については、自動車や自転車の運転中のスマホはもともと道路交通法などで禁止されている。歩きスマホは危険だが「禁止」になじむとはとうてい思えない。ゲームそのものについても、危険な場所や不謹慎な場所でのポケモンの出現は避けてほしいが、それは最終的には運営側の自主判断に期待すべきことではないか。法令でゲームの内容を規制せよという意見は聞いたことがない。この質問でいう「規制」は内容があまりに不確かで、「誘導」に近い質問ではないだろうか。

     司会 世論調査室。

     世論調査室長 指摘の通り、具体的な規制の議論は難しいと考えていたが、一方でこれだけ社会問題化しているからには、やはり国民意識を聞いてみるべきではないかということで調査した。規制を設けるべきという回答がこれほど高いとは思っていなかった。特に30代で過半数、20代以下はサンプルが少ないので分析は難しいが、20代以下も拮抗(きっこう)しているような結果が出た。かといってあおりたくないので、20行足らずの短い原稿にした。誘導という指摘に関しては、例えば安全保障法制やTPPなど難しいテーマを聞く時には説明を付けるが、説明によって誘導が生じるという問題がある。「ポケモンGO」に関して言うと、調査の時に説明を付けたが、ほぼ知らない人はいないので、誘導にあたることはないと思っている。こういう社会の関心事については、公正中立に気を使いながら、果敢に質問していきたい。

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