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社説

「貧困」への中傷 子供の人権を脅かすな

 ひとり親家庭で育った女子高校生が経済的理由で専門学校への進学をあきらめたことをNHKがニュース番組で紹介したところ、ネットに「貧困ではない」「捏造(ねつぞう)だ」と中傷する書き込みが相次いでいる。

     今は深刻な子供の貧困問題に国を挙げて取り組まなければならないときだ。それなのに自らの困窮を語った高校生を袋だたきにするような言動は、卑劣極まりない。まず貧困の実態をきちんと理解すべきである。

     番組は、女子高生が冷房のない部屋で暮らし、パソコンが買えないためキーボードだけ買ってもらって練習していることなどを伝えた。

     ところが、「部屋にアニメグッズがたくさんある」「1000円以上のランチを食べたとツイートしている」「映画を見に行った」などの書き込みがネットにあふれ、生徒の容姿の中傷や自宅の写真までアップされた。

     自民党の片山さつき参院議員もツイッターで「チケットやグッズ、ランチ節約すれば中古のパソコンは十分買えるでしょう」と書いた。

     日本の相対的貧困率は16・1%(2012年)で、先進諸国では高い水準だ。相対的貧困とは、全世帯を所得順に並べ、その真ん中に位置する世帯の年収の半分(12年は122万円)に満たない人の割合を指す。必ずしも食べ物や住まいがないわけではないが、子供たちの成育に深刻な影響を与え、社会からの孤立や排除につながるのが相対的貧困だ。

     お金のかかる部活動ができない。修学旅行や進学をあきらめる。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でつながっていないと仲間はずれにされるから食事や教育費を犠牲にしてスマートフォンを持っている。そんな生徒は多い。

     各国とも貧富の差を縮め、格差を固定させないように税や社会保険で所得の再分配を図っているが、日本は再分配が若年層にあまり効果をもたらしていないと指摘される。

     特に、ひとり親が非正規雇用で働き子供を養っている家庭の貧困率の高さは突出している。

     複数の仕事を掛け持ちでこなしているため、子供の世話をする余裕がない親は多い。自我が未発達の子供にとっては将来自立するための土台ができないまま育つことにもなる。

     そういう子供に自己責任を求めること自体が無理だろう。

     生活保護の不正請求をたたくような感覚で子供の貧困に険しい目をむけるのは間違っている。子供たちはますます声を上げられず、孤立したまま困窮を極めていく。

     そうした現実に対して理解を広げる必要がある。すさんだ社会にしてはならない。

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