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余録

演劇評論家、小田島雄志さんの著書…

 演劇評論家、小田島雄志(おだしまゆうし)さんの著書「シェイクスピアに学ぶ老いの知恵」に紹介されている劇中のせりふがある。「この世界はすべてこれ一つの舞台、人間は男女を問わずすべてこれ役者にすぎぬ、それぞれ舞台に登場してはまた退場していく」▲さいたま市に拠点を置く高齢者劇団「さいたまゴールド・シアター」は今年5月に亡くなった演出家の蜷川幸雄(にながわゆきお)さんが10年前に設立した。55歳以上の人をオーディションで選んだ。主婦、元公務員、元会社員……。平均年齢は77歳だ▲車いすの高齢の男女が集団で舞台の中央に進んでいく。男は紋付きはかま、女は留め袖姿。シェークスピア原作、蜷川さん演出の「リチャード二世」は華やかな宮殿の場面で幕を開ける。この演劇を見た時、一人の劇団員にひきつけられた。90歳になる最高齢の女性だ▲30歳から中学の勉強をやり直し、定時制高校を経て大学でロシア文学を学んだ。パンフレットには「何でも夢とファイトがあればできる」とあった。3時間に及ぶ劇で時に高貴に笑い、時に悲しみに沈み、役を演じ切った▲蜷川さんを失い、落ち込む劇団員もいた。それでも誰一人劇団をやめなかった。生きている限り、芝居をしたいと。蜷川さんが企画し、一般公募の高齢者を中心に12月に上演される「1万人のゴールド・シアター2016」に参加するという▲長く人生の舞台に立ち続けた人は深い喜びや悲しみを重ねている。それぞれの個人史を基に、演劇という表現を通して新しい自分に出会えるのではないか。鬼才が目指した舞台からは、老いることで得られるものが伝わってくる。きょうは敬老の日。

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