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永田町の目

山崎拓氏「YKK秘録」 畏友への弔辞と著書に込めた胸中

結成間もない「YKK」トリオ。(左から)小泉純一郎、山崎拓、加藤紘一の各氏。15年に及ぶ「YKK時代」の幕開けである=1991年撮影

 

26日から番外編ロングインタビュー連載

 1990年代に政界に一時代を築いた「YKK」トリオ。その一人、加藤紘一元衆院議員(9月9日死去)の葬儀が9月15日、東京・青山葬儀所で営まれた。天の配剤だろうか、その死を悼むように朝から降り続いた涙雨は昼前にやんだ。何かを語りかけるような遺影は自民党幹事長時代の一コマだろう、早くから「プリンス」と期待されて首相に最も近いと言われた実力者「K」の雄弁ぶりを見事に切り取っていた。

 それは突然の出来事だった。開式の刻が告げられる前、報道陣のカメラを気にするでもなく、盟友が眠る祭壇の前で男たちが握手し、言葉を短く交わした。年齢を感じさせない黒髪に、柔道で鍛えた堂々とした体躯(たいく)の「Y」こと山崎拓元自民党副総裁と、現役時代と変わらぬ痩身(そうしん)ながら、すっかり白髪になった「K」こと小泉純一郎元首相である。最後のYKKそろい踏みの瞬間だった。いったい何を話したのか、なんてヤボなことは聞けない。後述する山崎氏の弔辞に万感の思いが込められていたからだ。

加藤紘一元自民党幹事長の遺影。いずれは首相になる人だと誰もが思っていたという=東京都港区の青山葬儀所で9月15日、中村藍撮影

 太く、朗々とした山崎氏の声が会場内に響いた。

 「去る9月10日夕刻、君の訃報に接し、正直覚悟はしていたものの、ついにその日が来たかと深い哀(かな)しみに襲われました。一昨年6月、ミャンマーの旅から帰国後病床にあると聞いて何度かお見舞いに行こうと試みましたが、『面会謝絶』とのことで果たせず、焦燥の思いでした。

 とりわけ僕はこの2年ほど前から講談社からの勧めで『YKK秘録』の出版を思い立っておりましたので、その記述の内容について主役である君の了解を得る必要があり、その機会がなかなか得られず困却しておりました。結局もう一人の主役である小泉純一郎君をはじめ拙著の登場人物のどなたにも了解を得る礼を欠いたままの出版となってしまいました。この機会に改めてお許しを乞います。

 僕はこの本の中で僭越(せんえつ)ながら『YKK時代』と勝手に称しましたが、“YKK”というネーミング自体が君の発案であり、今の政界には見られないような躍動感のある『YKK時代』というものがあったとすれば、それはすべて君の書いた脚本を、君自身が演出したものであります。僕など脇役の一人として、ひたすら追随しただけであります。若手政治家約90名を結集させた『グループ新世紀』の結成や、小選挙区制度の導入反対等YKKの連帯による政治行動は、時の政治にダイナミズムを与え、いやが上にも国民の政治に対する興味と関心を惹起(じゃっき)したことは間違いありません。まさに君の政治的レガシー(遺産)の一つであると思います--」

加藤紘一元自民党幹事長が眠る祭壇の前で握手し、言葉を交わす山崎拓元自民党副総裁(左)と小泉純一郎元首相。「YKK」が最後にそろい踏みした=東京都港区の青山葬儀所で9月15日午前、中村藍撮影

 山崎氏は弔辞の冒頭、7月に刊行した自著「YKK秘録」に言及した。田中角栄内閣時代の72年12月の選挙で初当選した山崎氏は91年、同期の加藤、小泉両氏とで「YKK」を結成。旧田中派の流れをくむ経世会(旧竹下派)の金権支配と公共事業を巡る政官財癒着の打破を目指して行動を共にした。76歳で政界を引退するまで、常に政界の中心にいた希少な党人派政治家だけに、苛烈な権力闘争の実態を取材したいというマスコミ関係者の申し出が後を絶たないでいた。

 <多分、私の生存中に、今まで明らかにされていない事実があればなるべく調べておきたいということだろう。なかでも宮澤・村山・橋本各政権成立時の意外性ある経緯や、『加藤の乱』の裏話、小泉政治の功罪等が最大の関心事のようである。これらは振り返ってみると、すべてYKKがらみで進行してきたといえる>

「YKK秘録」で裏面史を明らかにした山崎拓元自民党副総裁。苛烈な権力闘争を生き抜いた今、何を語る……=中村藍撮影

 剛胆なイメージが強い山崎氏だが、議員になって以来ずっと備忘録を書き続けるなど、きちょうめんな一面も併せ持つ。面会相手の様子や会話などをメモし、その態度に感じられる思惑も細かく記した。かつて登場人物をすべて実名で記載したメモワール「転換期の光芒(こうぼう) 厚生政務次官日記」(りーぶる出版企画刊、80年)で生かされた。それから35年以上を経た本書でも同様のスタイルが採られた。<これらのほぼ正確な事実は、同時に近現代政治史における生の資料になると考え、ここに『秘録』として公開することにした>と山崎氏は狙いを語る。

 おなじみの政治評論家らによるロングインタビュー連載企画「永田町の目」は今回、番外編として、山崎氏とのやりとりを通じて、畏友(いゆう)への弔辞と著書に込めた胸中を、9月26日から計3回にわたって解き明かす。【中澤雄大/デジタル報道センター】

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