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余録

明治の初め、新政府の一翼を担った大隈重信は…

 明治の初め、新政府の一翼を担った大隈重信(おおくましげのぶ)は東京・築地に邸宅を構えた。伊藤博文(いとうひろぶみ)、井上馨(いのうえかおる)ら論客が数多く訪れ、日本はどう歩むべきか盛んに議論した。いつしか「築地の梁山泊(りょうざんぱく)」と呼ばれるようになる▲梁山泊は中国の明代に完成した長編小説「水滸伝(すいこでん)」の豪傑たちの拠点である。天下の騒乱を描く水滸伝は「水のほとりの物語」という意味だ▲同じく東京湾のほとり、築地から市場が移転する予定の豊洲新市場の騒動も収まる気配がない。いつの間にか建物地下に空洞が作られ、たまった水から微量のヒ素や六価クロムが検出された。問題は安全面だけではない。主要な建物3棟の建設工事では、2回目の入札で予定価格が1回目の1・6倍に上る約1035億円に跳ね上がっていた▲小池百合子(こいけゆりこ)知事と調査チームはさしずめ「豊洲の梁山泊」に陣取り、疑惑に切り込む勢いを見せている。市場の移転を進めた当時の都知事、石原慎太郎氏は「都庁は伏魔殿(ふくまでん)」と言う。伏魔殿は水滸伝に出てくる。魔物を閉じ込めていたが、封印が解かれてしまう。空洞は誰の判断で作り、建設予定価格はどんな経緯で変わったのか。そもそもなぜ豊洲が移転先だったのか。魔物の仕業にしてしまっては真相は分からない▲豊洲にはかつて巨大なガスタンクや煙突が立ち並んだ。エネルギー基地として高度成長を支えた陰で土壌は汚染された。今は東京五輪を控えて開発が進み、利権も渦巻く。とどまるところを知らない東京一極集中を象徴する場所だ▲今回の騒動を見て思う。私たちは歴史から問いかけられているのではないか。どんな東京をめざすつもりなのか、と。

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