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社説

首相の所信表明 「未来」は謙虚に語ろう

 臨時国会が召集され、安倍晋三首相が所信表明演説を行った。首相は経済重視を改めて強調するとともに、改憲論議の加速化や北方領土問題の解決に意欲を示した。

     参院選勝利で政権基盤をいっそう強化した首相が長期政権を展望した内容と言える。ただ、アベノミクスは行き詰まり、外交もさまざまな課題へ対処を迫られている。我田引水に陥らず、謙虚に野党との論戦に応じる必要がある。

     衆参両院で改憲に前向きな勢力が3分の2以上の多数を占め、自民党が参院で27年ぶりに単独過半数を回復してのぞんだ国会である。

     首相は演説で「未来」との表現を18回にわたり用いた。強い政権基盤で中長期的課題に取り組む意欲の表れだろう。

     演説で目立ったのは憲法問題に関する部分だ。首相は在任中の実現を目指す改憲について「(改正)案を国民に提示するのは、私たち国会議員の責任」と言い切り、衆参憲法審査会で議論を深めるよう求めた。

     だが、この言い方には疑問がある。まず、行政府の長である首相が憲法改正の発議が国会の「責任」だと発言している点だ。

     憲法改正がまるで既定方針であるかのような点も気になる。参院選の結果、確かに改憲勢力は発議に必要な多数を占めた。だからといって、選挙で改憲案が争点として議論されたわけではない。

     与党ですらまだ、改憲項目を絞り込んでいない。国会で議論を着実に進めるのであれば、問題の多い自民党改憲草案をまずは撤回すべきだ。

     改憲とともに積極姿勢を示したのがロシアとの北方領土交渉である。日露関係について「平和条約がない異常な状態に終止符を打ち、日露協力の大きな可能性を開花させる」と問題解決に意欲を示した。

     強い政権基盤を外交に生かす発想は理解できる。だが、演説では安全保障関連法や沖縄県との対立が泥沼化する米軍普天間飛行場移設について直接の言及がない。バランスを失してはいないか。

     安倍内閣は解決すべき多くの課題に直面している。

     首相は演説でアベノミクスの加速を改めて強調した。だが、日銀が「2年で2%」と当初約束していた物価上昇目標は実現せず、経済成長の足取りは重い。その結果、消費増税延期に追い込まれた。

     子育て・学生支援などを掲げてはいるが、安定財源の裏付けや持続可能な社会保障の制度改革を欠くようでは「未来」の展望は開けまい。長期政権を目指すのであればこれまでの政権運営を点検し、野党の主張にも耳を傾けるべきだ。

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