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余録

「諸王たちの多くはこの町を手に入れようと望んだ…

 「諸王たちの多くはこの町を手に入れようと望んだ。その場所は最も魅力的な崇敬(すうけい)の対象である。その地はいかに多くの戦いを引き起こしたことか……」。12世紀のイスラム教徒の旅行家がこう記したのはシリアの町アレッポのことである▲この世と同じほど古い町は多くの王たちの滅亡を見送りながら存在し続けている。そう述べる旅行家は堅固な城(じょう)砦(さい)と美しい市場をたたえ「この世に肩を並べるもののない町」と評した(「イブン・ジュバイルの旅行記」)▲現代のアレッポでもシリア北部最大の都市としての繁栄は内戦が始まるまで続いていた。だが内戦はアサド政権側と反体制派側に町を二分し、市街戦や空爆が市街を破壊した。そして今、政権側に包囲され、空爆を受ける市東部の住民25万人を脅かす人道危機である▲反体制派の支配地域を完全に包囲した政権側は、一時停戦をはさみ18日から空爆を再開した。空爆は人道支援物資輸送の車列や水道施設に及び、被包囲地域では生活物資や水の不足が深刻化しているという。再開後の空爆による民間人の死者も200人を超えている▲この危機のさなかの国連安保理、そこではアサド政権に肩入れするロシアと反体制派を支援する米国が非難を応酬する見慣れた光景がくり返されるだけだった。途方もない数の難民を生み出したシリア内戦の5年間を経て、なおも国際社会のこの体(てい)たらくが情けない▲「神はまだこの町が廃墟(はいきょ)になることを命じていない」とは先の旅行家が時を超えたアレッポの繁栄を逆説的に言い表した言葉である。人の身勝手や愚行がもたらす惨禍(さんか)は人に止められぬはずがない。

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