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余録

全国統一の自動車運転免許制度ができた1919(大正8)年…

 全国統一の自動車運転免許制度ができた1919(大正8)年、現在の自動車学校の先駆けとなる「松筒自働車同好会(まつとうじどうしゃどうこうかい)」が大阪・谷町に誕生した。8000台の人力車が行き交う大阪の街で自動車は300台に過ぎなかった▲創設者の松本由太郎(まつもとよしたろう)は「誰もが自動車を運転できる時代にしたい」との願いを込めたが、周囲は「物好きなことを始めはった」と冷ややかだった。郊外を走れば人が集まりたちまち立ち往生した。庶民にとって自動車は遠い存在だった▲自動車学校では、運転実習とともに大学の工学部並みの講習を行った。米国の専門書を翻訳したテキストを使って自動車構造学や電気工学を講義したほか、エンジン構造の設計図や電気回路図の書き方まで教えた。命を預ける機械の仕組みを知っておくべきだと考えたからだ▲1世紀が過ぎ、人間が運転に関わらない自動運転車の開発が進む。日産自動車は高速道の単一車線で自動運転できる新型車の販売を始めた。米フォード社は5年後までにハンドルもペダルもない完全自動運転車を実用化する計画だという▲過疎地では地域の足として期待が集まる。高齢者の移動を助け、事故の減少や渋滞の解消にも役立つという。しかし、米国では自動運転支援機能が作動中の車による死亡事故が起きている。「コンピューターが運転者」への不安を拭い去るのは容易でない▲免許は不要になるのか。事故の責任は誰が負うのか。サイバー攻撃の危険はないのか。システムは100年前とは比べものにならないほど高度で複雑になる。命を預けることに変わりなく、疑問を解消する丁寧な「授業」が必要だ。

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