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社説

大隅氏に医学賞 地道な基礎研究の勝利

 生物が細胞内の物質を自ら分解して再利用する「オートファジー」の仕組みを解明した業績で、東京工業大栄誉教授の大隅良典博士に今年のノーベル医学生理学賞が贈られることが決まった。日本の医学生理学賞の受賞は2年連続で4人目、単独受賞は利根川進博士以来だ。

     生物の体内では不要な部品を分解し新しい部品を作る営みが繰り返されている。分解の仕組みには2通りあり、そのうちの一つの仕組み解明には2004年のノーベル賞が贈られた。オートファジーによる細胞内のたんぱく質分解とリサイクルもまた、生命維持の基礎であり、地道に積み重ねた基礎研究の成果が認められた意義は大きい。

     オートファジーの現象そのものは1960年代から知られていたが、詳しいメカニズムや役割は長年、わからなかった。大隅さんは、これを解明する糸口となる現象を88年に酵母で発見。実験しやすい酵母を利用し、オートファジーに必要な遺伝子を次々と突き止めることで、一気に研究が進んだ。これが世界の研究もけん引し、私たちの細胞に同様の仕組みがあることも明らかになった。大隅さんの研究が一つの重要分野を切り開いたといえる。

     今では、感染細胞から細菌やウイルスを排除するのに重要な役割を果たしていることもわかった。パーキンソン病や糖尿病、がんにもこの仕組みが関係している。治療薬開発も進められ、基礎研究が結果的に応用につながっている。

     大隅さんのモットーは「流行のテーマを追うのではなく、自分がおもしろいと思うことを研究する」こと。その研究歴を振り返ると、研究の流行に左右されず、一見地味な分野で、こつこつと自分の好きな研究を続けてきた姿勢がよくわかる。まさに科学者らしい科学者だ。

     今、生命科学の世界には、さまざまな新しい分野が登場し、大きな発展を遂げようとしている。遺伝子情報を使ったゲノム医療、簡便で正確な遺伝子組み換えを可能にしたゲノム編集、これまでとは作用メカニズムの違うがん治療薬の開発、人工知能(AI)を使った診断や治療などに期待がかかる。

     ただ、これらの発展を見ても、それぞれの根底にあるのは科学者の好奇心に基づく基礎研究の成果だ。

     昨年政府が決定した「第5期科学技術基本計画」は、産業界にも配慮し、経済成長を意識した内容となっている。しかし、大隅さんのような基礎研究は産業につながる成果が見通せない。流行も出口も考えない基礎研究に時間と費用をかける余裕の大切さを示した受賞といえるのではないだろうか。

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