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熊本地震・ふるさとよ

第4部/3 沈む心、引き戻さねば

「震災の年にとれた米をみんなに食べてもらいたいけん」と笑顔で語る宮永さん=熊本県益城町で、福岡賢正撮影

 熊本地震のショックで心身に不調をきたした熊本県益城(ましき)町下原の加藤重美さん(80)は、避難先の町公民館飯野分館で徐々に元気を取り戻し、9月末に仮設住宅へ移ることができた。避難所のリーダー的存在だった宮永和典さん(65)がその理由を説明する。

     「避難所じゃみんな『じいちゃん、じいちゃん』と声かけて、とごやかすわけですよ。そうすっと全然怒りもせんでニコニコしとんなったですもんね。口では強がっとらすばってん、内面は違う。寂しがり屋なんですよ」

     とごやかすとは「親愛の情を込めてからかう」という意味の熊本弁。自分と同じ被災した人たちから温かい関わりかけをシャワーのように浴び続け、生きる気力を取り戻したというわけだ。

     宮永さんは元消防士で、生と死が交錯する現場を長年見てきた。地震で益城町東無田の自宅は全壊したが、直後から集落の人々の安否確認や救出、食べ物や寝る場所の確保などに奔走した。5月20日からは隣町の老人福祉施設に通って夜の宿直として働いている。

     宮永さんが分館に来た時、45人いた避難者の多くが後期高齢者だった。自宅を失って将来像が描けない不安を一人一人の顔に読み取り、宮永さんは思った。「落ちこんでいく気持ちを引き戻さねば」。楽しい避難所にするよう心がけた。

     「被災関係のいろんな書類が役場から来るけど、お年寄りは分からない。その度集まってもらって説明し、疑問に思ったら必ず相談してと言いました。『どうかしたあ?』って尋ねると、『うーん実は』って心配事が出てくる」

     水田が荒れるのを気にする農家から相談され、宮永さんは今年、米作りも請け負った。

     「五反半(55アール)ぐらいかな。お年寄りの気がめいったら終わりだもん。大してとれんだろうけど、震災の年にとれた米だよってみんなに食べてもらって『半年前はおにぎり1個で我慢したよね』って語り合えれば、それでいいけん」【福岡賢正】=つづく

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